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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
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その転校生の第一印象は「なにこいつ、最悪やん」だった。そしてそれは、クラスメイトの大半の統一見解だった。
学期の途中の編入生、イレギュラーな闖入者はどんな奴なのだろうか。
滅多にない事態の発生に、いきおい、その好奇心と警戒心が綯い交ぜになった視線を浴びながら。地域のママさんパパさんによると《息子を入学させたい中学校第一位》たる中高一貫の男子校への転入生は無愛想な棒読みもあんまりだろ、という声で簡潔にこう言った。

「月田です。よろしく」

担任のミミセンは苦笑いして、月田に「もうちょっとなんかないんか」と声をかけた。「趣味とか特技とか別にないんで」と答え、首をかしげてすこし考えた月田は、微笑んだ。
夏のはじまりのじとっとした空気のなか、染めているのか地毛なのか判然としない茶髪が揺れた。

「薄気味悪いって思いますね」
ミミセンがぽかんと闖入者を見た。
「なにここ、男ばっかで気持ち悪いなぁって、思いました」

関西弁もあまり好きではないです、と続いたきれいな標準語のイントネーションに、クラス全員が呆気に取られてフリーズした。
一応の進学校に意気揚々と入学して、たった半年の中学生。こんなこと、言われる筋合いはない。
取り繕うように、ミミセンの声がした。夏の教室に虚しく響いた。
「……まぁ、なかようしてやってくれや」

取り繕う気もフォローする気もない、僕も含めた全員の統一見解再び。「やなこった!」
共学校への憧れと、自分たちへの微かな自虐。その心理を、鋭くえぐり、突かれた。まるで狙い澄ましたかのように、見透かしたかのように。

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『irreplaceable=かけがえのない』です。
英作文で使うと褒められワード(from英語教師)になります!
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【2016/05/17 16:14】 | irreplaceable/Holy you
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ぶれこみさんへ
砂凪
おはようございます、ぶれこみさん。

もうほんとにいつも読んでくださっていて、ありがとうございます。
つかみ……ありがとうございますー。
褒められて伸びる子なのでどんどん褒めてやってください。

でも、確かにつかみは難しい。
いちばん、つかみに苦労したのが『そこは命のあるところ』で、プロットはあるのに「まじかよ書けねーよ!」って思いました。
まぁ、結果としてそこそこ納得いくものになったので結果オーライです。

以後…どうなんだろう、ご期待に沿えるかは自信がないですが…よろしくお願いいたします。

小太郎さんへ
砂凪
おはようございます、小太郎さん。

出没時間がばらばらすぎますよね……。
心許ない感じで動いています。
凹むことばっかりですが。

『イリプレーザボー』みたいに発音します。
日常会話ではあんまり使わないかもしれません。
そうですー。こんどは中学生が主役です。

いつもこめんとありがとうございますー。

つかみが巧いね~!!
ぶれこみ
 「Painkiller」のときも「奈落の揺り籠」のときも感じたけど、砂凪ちゃんはつかみがとても巧いですね。ぐっと興味を惹かれて、先を読みたくさせる、そんな冒頭部が特に最近の作品では目立っているように思います。
 僕の作品はどれもこれも、つかみがド下手なんですよ。地味で暗くて、先読みたくねー、って感じの導入部ばかりです。ここは、砂凪大明神を礼拝して、少し才能を分けて貰おうかな。今度、米と榊と塩をお贈りしますよ、どうぞ受け取って下され……。(←嘘つきは泥棒の始まり)
とまれ、以後期待できますね。また読ませて戴きます。


再開あざーす(^O^)
那須の小太郎
こんばんわ~(^。^)/

出没時間がバラバラなようで!
生活スタイル少し変わったんでしょうか(?_?)

『irreplaceable』読めない、発音できない(。・_・。)
今度は中学校が舞台なんでしょうか(・?・)

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「ホリィ、ホーリィー!」
昇降口から焼却炉にごみ箱を持っていく途中。同級の中尾が箒を片手に肩をすくめて追いついてきた。
3日ほど前から聞こえはじめた蝉の声が流れ込んでくる。
制服のシャツをぱたぱたやりながら、いつになったらクーラーが入るのだろう、と冷暖房完備のはずの校舎を見上げた。
中尾の不機嫌な声がする。お調子者の彼、いらいらしたこの声のトーンは珍しい。

「なぁ、あいつ、何なん?」
「僕かて知らんわ」
僕がバッサリ切り捨てると、中尾は級長さーん、という。
「なんとかしたってくれや。あいつアホちゃうか、何なん?気持ち悪う、かて自分も男子やんか」
「せやから、知らんて。それにアホ言うたらあかんで」
「けど、あいつ、何なん?第一印象、めちゃアホやろ」
「だから、言うたらあかんて。ミミセンに言うたるで」
両手でふりあげた箒の柄を僕の頭上すれすれまで降り下ろす中尾は剣道部だ。むくれた顔で呟く。
「ミミセンかて、自分、アホだのクソだのしかよう言いはらへんやんか」
「それも言うといたる。てか、アホはお前や」
「なんで」
「ガッコの木で竹馬作るのやめとき言うたやろ。しばかれんで、そのうち」
なんでバレとるんや、級長は千里眼や……と立ち尽くしている中尾をその場に残し、焼却炉に向かった。

暑いなぁ、とすかんと晴れ上がった空を見上げる。良くも悪くも現代っ子、冷暖房がないと生きていけない。
『男ばっかで気持ちわるいなぁって、思いました』
聴き慣れない標準語の声がふと、蘇る。正直すぎる感想。あいつにとっては、ここは居心地のわるい場所なのだろうか。冷房のない猛暑日のように。

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【2016/05/20 06:00】 | irreplaceable/Holy you
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空になったごみ箱を片手に教室に戻ると、賑やかに放課後の掃除が執り行われていたはずの教室の空気が凍りついていた。
「どうしたん?」
入り口近くで啞然としていた西木を捕まえて訊ねると「最悪や」という返事が返ってきた。
「最悪ってなにが」
問いかけながら、その答えのおおよその見当はついていた。
「あの転校生な、『掃除進まんから、俺付き合われへん』みたいな態度で帰りよったわ」
転校初日からアホだの最悪だの、散々な嫌われ様である。
「なんでなん?」
「知らんわ。ほんまに、宇宙人が転校してきよった」

月田はその後3日と経たず、その宇宙人ぶりを遺憾なく発揮した。
班ごとの昼食の席を外し、午後になると消え、体育と数学の授業はことごとくサボった。
僕がミミセンに呼び出されたのは、宇宙人の来訪からたったの1週間後。呼び出す相手がまちがっている。

「なぁ、堀井。頼むわ、月田が馴染めるようにしたってくれや」
「えー、そんなん、先生の仕事やないですか」
「堀井は人当たりええから、だれとでも仲良くできるやろ」

埃っぽい教務室で自分の職務をいとも簡単に放棄し、とんでもない理屈を持ち出したミミセンに、僕は猛然と抗議したけれど、ミミセンに手を合わせ拝まれ「な、頼むわ。この通りやで」と言われるにあたり『宇宙人月田の学校馴染ませ係』に任命されてしまった。

だれとでも仲良くできることは、だれに対しても同じ一線を引いていることだ、ということにミミセンは気付いていない。
だれとも当たり障りなく。そうだ、当たらず、障らず、一定以上の距離からは敬して遠ざける。
そうして過ごしていくのなら、僕だって取り返しのつかないことをしてしまうことはないのだろうから。
だれかを大事に思い、それなのにそこに生じる相反ずる感情で、だれかを永遠に失うこともないのだろうから。
……きっともう、二度と。

それなのに。それなのに、どうして僕は、面倒くさそうなことこの上ない新規クラスメイトに関わろうとしているのだろう。

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【2016/05/23 07:30】 | irreplaceable/Holy you
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小太郎さんへ
砂凪
こんにちは、小太郎さん。

そうなんですか!?
小太郎さんが周囲にイライラしてたなんて意外に思います。
(勝手な思い込みでごめんなさい)
そーですよねぇ、わたしも小中学生のころは男子が異様に怖かったです。

ちなみにわたしは掃除の時間、面倒なのでしょっちゅう遁走していました。
大学に入ってなにより驚愕したのが「掃除のおばちゃん」が各講義室の掃除をしているということです。
わたしの掃除嫌いっぷりが推して測れようというもの。。。
自分の部屋の掃除は大好きなのですが、『わたしはきれいに使っている公共の場所を、なんで自分まで掃除しなきゃならんの』ととんでもない理屈がどこかにあったのだと思います。

「ミミセン」の由来はのちほどー。
ではでは☆彡

宇宙人と呼ばれて
那須の小太郎
此処での転校生、自分の小学生の頃のような感じです(・_・;)
小中学生の男子って何であんなにふざけるんだろうね(゜_゜)

私は掃除がそれほど嫌いではなかったんですが
さっさと済ませて少しでも早く家に帰りたかったのに
掃除当番の時、皆がふざけたりダラダラして
何時までも帰れなくてイライラしてました(ー_ー)!!

先生どうして「ミミセン」って呼ばれてるの(・?・)

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「月田」
体育館裏のイチイの樹の下。そこが宇宙人の特等席だった。繁茂する葉っぱが無数の日だまりを作っている。
陽射しが遮られるお陰と、風が吹き抜ける立地で涼しい場所だ。

夏の風に髪を煽られながら昼休み、そっと歩いて近づく。
月田は黙って俯き、なにやら本を読んでいる。静かにしていると、寂滅の境地にいるみたいだ。
「月田」ともういちど呼ぶと、ハリセンボンみたいな声が飛んできた。前言を胸の内で瞬殺的に撤回する。
「またお前?なにか用?」
本から視線すら上げずに月田が言う。
「用がないと来たらあかん?」
「まあね。俺が不快だし」

もうほんとこいつ何様やの。
内心嘆きつつ、それでも近寄っていくと月田は一応、読んでいた本をパタンと閉じた。
決して、断じて、好意的とはいえない静けさが広がる。沈黙に耐えかねて、僕は言う。

「なんの本、読んでたん?」
「素粒子論」
「……はい?」
「だから、素、粒、子、論。頭、わるいの?」

2重3重の意味で絶句した僕を、ちらっと見て月田はちいさくわらった。
ばかにしているわけでも、嘲笑っているわけでもなさそうだ。うたうように月田は言う。
「級長は大変だな。転校生が馴染めないみたいだから、なんとかしてくれって担任に頼まれたんだろ?」
「半分当たりで半分外れや。僕が級長やいう認識は一応あんねんな」
「いかにも優等生ですーみたいな顔してるし、お前」

なんやの、この褒めている風味のチクチク感。
僕はわざとつっけんどんに何度目かわからない台詞を言うことにする。

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【2016/05/24 07:30】 | irreplaceable/Holy you
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「……嫌われるようなこと、なんでするん?仲良うしよう思わへんの?」
月田は淀みなく答えた。
その答えを、既に準備していたかのように。
「ばかばかしいことしか言わないし、しないし。なに言っているのか、なにがしたいのか、そもそもなにをしているのか……ついていけない。本読んでるほうが、数千倍、有意義」
「月田、毒ありハリセンボンみたいやな」
無意識に思ったことを口にすると、意外なことに月田が笑い転げた。
仏頂面か完全な無表情以外をはじめて目の当たりにし、多少たじろいだ。
「だな、俺もそう思うけど、生まれついてだからどうしようもない」
「せやな。恨むんやったら神さまやで」

毒ありハリセンボンはため息をついた。
「マトモに話しできそうなの、お前しかいないな、あのクラス」
ちらっと名札に目をやって、月田は僕を呼んだ。
「堀井、千尋。お前な」
「うん」
「クラスメイトと仲良くしようなんて欠片も思っていないのは、お前もおなじだろ」
「……え?」

まさか、そんな。そんなはずはない。絶対にばれているはずはない。
なによりもだれよりも、器用に取り繕って隠し続けている『僕』を月田が知っているはずはない。僕はぎこちなくわらっていう。

「僕、級長やで。みんなと仲良うせえへんわけ、ないやんか」
「だからだよ。クラス長やってれば、全員と公平に平等に接するしかない。だから、お前はあの面倒なクラスで、わざわざ級長なんてやっている。ポジションにいることで、自分を保っている。ほんとにご苦労さまとしか言いようがないけど」
肺の奥のほうから、不意になにかがせり上がってくる。
月田のペースに乗せられてはいけない、誤魔化さなければ、と脳裏で鳴るアラートとは反対に。僕はすべてを認める台詞を吐いていた。

「どうして……?」
月田は静かにわらった。夜の海のような、わらいかただった。
「俺とは正反対の方法で、お前が自分を隠そうとしているからだよ」
月田の顔を見ることができなかった。ただ、心のなかで繰り返した。
――…なぁ、ヒロミ。どうか、どうか、僕を許して。いや、そうじゃない、絶対に許さないで。

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【2016/05/25 07:30】 | irreplaceable/Holy you
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ぶれこみさんへ
砂凪
こんにちは、ぶれこみさん。

いいえ、某曲のひどい台詞は「君の未来のために君の笑顔のために/僕は今すぐ君の前から消える」です。
でも、この歌詞を深読みすると女性のほうが若干怖い感があります。
……関係ないか。
ヒロミの名前の由来は全然別です。のちに明らかになります。
そういえば、しばじゅんの歌に「HIROMI」があった…とびっくりしています。


今回は「日常会話をがんばろう」というまるで英会話教室のスローガンのような目標を掲げて書いております。
だから気付いてくださってうれしいですー。
わたしは関西弁しゃべれるんですけど、なにせ母方だけの関西ハーフなので若干へんな関西弁になっている点、ご容赦願います。

あのですね、今回かぎりは、いまワードのファイルにある下書きだと「くっつき現象」が生じていないんです。
恋愛小説じゃないです、ミステリみたいになっています、なんとかしなきゃ…。
でも、いままでの更新でかなり伏線はっちゃったから、このままあげるかもしれません。。。

今後はびっくりするような展開です。びっくりしてください、お願いします(笑)
ではでは☆彡

「お前がそんな顔するから、俺はお前のこと何も判らなかったんだ」
ぶれこみ
 だったっけ? ちょっと記憶あやふや。HIROMIってここから取ったのー?
 ちひろとひろみのストーリーも興味があるなー。

 こんばんは、砂凪姫。今宵は風も止んで過ごしやすい気候の富山です。
 でも、月田と堀井のキャラが生き生きと描かれていて面白いね。ミミセンもおもしろげな先生だけど、関西弁だからとても性格が色濃く演出されているね。ところどころ、変ななまりがあるようだけどネ。

 BLだと判っているから、ああこいつとこいつがくっつくんだ、と予想付くけど、言わなきゃ判らないよね。ていうか、予想を裏切るくっつき方をしてもおもしろいかも……。(-_-;)

 今後の展開、楽しみにしています。
 
  

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