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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
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佐倉奏はバインダーを見下ろし、ため息をついた。

奏が正式名称『影遺失者保護監視官』、俗称、経過観察官、訪問観察者になって5人目のクライエント。3年たっても快復の兆しは一向に見えない。ひとり暮らしには広すぎると訪問経過観察のたびに思うダイニングルームの、となりの椅子に腰かけた男に言う。

「いいですか?三食きちんと摂って、ちゃんと眠ってください」

バインダーに挟まれているのは男…聡介…の保護用経過観察データ用紙だ。既に管理公社への情報転送は終わっている。『処置』が終わり、聡介が風呂を使っているあいだにざっと目を通した。データには聡介のここ一週間の食事内容・睡眠時間・外出記録などの記録が並んでいるのだが。

「一日の目標摂取カロリー分は、必ず食べてください。睡眠は目安6時間です」
聡介は申し訳なさそうに、すらりとした長身を縮めた。
「…すみません」
「食欲がないときのために、少量で必須カロリーが摂れる飲料を今回用意しました」
「…申し訳、ないです」
なんの抑揚もない聡介の声。
「睡眠導入剤が必要でしたら仰ってくださいね」
「はい、わかりました」
アナログの時計が6時を知らせ、奏は立ち上がる。
「では、本日の経過観察はこれで。帰り際に自家発電装置の点検をしていきます」
「お世話になります、ありがとうございました」

聡介がひょこりと身体を折る。その身体から延びる影があるはずの場所には、いまだなにもない。


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【2014/08/17 12:45】 | ひかりのひと
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「あー…」
聡介の家から駅までの帰り道、自然とため息がこぼれた。
「…疲れた」
だれにともなく愚痴まで口をつく。

今日は娘の彩夏の学校で父子参加型イベントがあり、午前中に半休をとった。
イベントは親子サッカー。他の父親たちも奏も自分の子らの甲高い声援に後押しされ、必死になってボールを追いかけた。
小柄で小回りのきく奏は3度シュートをはかったが、ゴールには至らず、彩夏いわく「センスがない」らしい。

「イベントのあとにクライエントの『処置』ねぇ…。特別手当は…、出ないよな」

駅で定期を自動改札にかざし、モノレールを待つ。
やがてやってきた車両に乗り込むと、いつも『処置』のあとにやってくる眠気が訪れる。携帯のアラームを管理公社の最寄り駅に着く時刻に設定すると、眠りが闇を運んできた。


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【産みの苦しみ的つぶやき】
次回作のリサーチのために図書館で新書が並んだ棚をうろうろしてました。
『60歳までに◎千万円貯めろ!』と『老後の心配はするな!』という2冊。
隣同士でいがみ合い、わたしに『えらいひとの言うことは鵜呑みにするな』という教訓をくれました(笑)

【2014/08/18 04:43】 | ひかりのひと
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Pearswordさんへ
砂凪
こんにちは、Pearswordさん。

躊躇っておられたのですねー。
ウェルカム・トゥ・腐女子ワールド!

滑り出し好調!ありがとうございますっ!
ネット小説をはじめられたのですね。
デビュー(?)おめでとうございます。

最近は特に体調を崩すこともなく、
さらには、ここに来るとうきうきするので『元気で頑張』っております。

ビョーキ日記だけではなく、こちらのお部屋もどうぞよしなに。
……無理っぽくなってきたらすみません。

しばしためらっていたのですが……。
Pearsword
 少しだけ、お邪魔します。
 滑り出し好調の作品のようですが、また、時間あるときに追いつきますので、お許し下さい。
 僕も、考えを改めて、ネット小説を始めたので、一度覗きにきていただければ、光栄です。
 リンク貼っておきましたので、是非、御一読下さい。
 ページの検索バーに「大坪命樹」と入れると、投稿作が出てきます。
 よろしくお願いします。
 では、元気で頑張りましょう。

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管理公社のデスクにむかい、第5クライエント、つまりは聡介のデータ処理をしているとふわりと紅茶の香りがした。
スクリーンから顔をあげると、同僚の高岡美南がにやにやしながら奏の机上にカップを置くところだった。

「随分とお疲れで」

愚痴の相手ができた、とばかりに奏は椅子を回し美南にむきあう。
「あー…もう、午前中に娘の学校、午後は訪問。葉山さんは俺が何人いると思ってんだ」
葉山は奏と美南、その他5人を従えるフロアマネージャーだ。
「『処置』をすっ飛ばせばよかったじゃないの。『処置』中、奏ちゃん、お楽しみのようだったけど?」
「……なぁ、いい加減、あれをモニタリングするのはどうかと思うんだが」
「わたしだってそう思う。けど、それが遺失者の快復度をはかるのにいい、っていうのよね…」
「ケース127、俺のクライエント5人目。あれってマジで役に立ってんの?」
「どうだろうね。ただのヘンタイ動画撮影みたいなモニタリングが役に立つとは思えないけど。官庁のお偉いさん方の趣味だったりして」
ぞっとしないな、と奏は心のなかで思う。美南の推測はあながち的外れではないのかもしれない。
「俺は、まぁ、いいよ。美南はいやじゃないのか?女の立場からして」
「いやに決まってるじゃない。いくらフィルタリングされるからって…ねぇ?」
ため息をつき、これから訪問にむかうという美南をひらひらと手を振って見送った。


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R18シーン執筆が苦手なため『ほのめかしメソッド』を使ってみました(笑)
奏(←いまさらですが、『かなで』です)と美南の会話から
いろいろ推測してみてください。

【2014/08/19 09:02】 | ひかりのひと
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インデックスケースは45年前に遡る。
とある女性が突然、影をなくした。比喩やたとえではない、物理的な影。
それとともに、彼女の感情が欠落し、生きていくうえでの必須欲求も消失していることが判明した。

影をなくす者…やがて『影遺失者』と呼ばれるようになる…は記録年次とともに次第に増えていき、科学的解明もできないまま、対策研究の場はたらい回しにされた。
万策尽き果てた、と思われたころ、大学の心理学合同研究チームが影をなくした者の共通点をようやく突き止めた。

『影遺失者の共通項として、過去に強烈なPTSDが記録されている。遺失者は生きていくうえでの感情・欲望を病状のステージによりそれぞれの程度で、影とともになくす。影に感情や欲望を託し、己から切り離すことにより心身の安寧を図ったものとされる。』

実に非科学的・非現実的な共通項、共通点。しかし、その他に各ケースの類似点はどこにもなく、散発的に生じるものではないか、感情をなくすのは明日の我が身ではないか、という不安を和らげる説だとされた。
PTSD定説、と呼ばれる。

「影、ねぇ…」
奏はぼんやりとキーボードのうえに手をかざす。
「別になくっても構わないんじゃないかな」
後頭部を強打された。振り仰ぐと、葉山が鬼のような形相で奏を睨んでいる。


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【妄想の生じる場所】
たとえば。
ケータイ、ということばがふしぎでならないんです。
どうして『モバイル』とか『ハンディ』とかいくらでも座りのいい言葉はあるのに
『携帯』→『ケータイ』となったのか。謎…。
あと、『検索』もどうして『サーチ』ではないのでしょうか。
ひょっとしたら…わたしが知らないだけで「外来語流入阻止委員会」なるものがあるのでは…。
……というような、妄想の延長線上にこういう『設定』が生じます。

【2014/08/20 09:27】 | ひかりのひと
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「あのなぁ。俺らの目的は『影快復』だけじゃなく、遺失者の人間らしい生活を取り戻すことなんだ。最悪のケースを見てみろ。あれじゃ、死んだ生きものだ」
「葉山さん、生ける屍…とかもうちょい洒落たこと言えないんですか?」
「うるせいやい。で、どうなんだ、ケース127の快復状況は」
「芳しくありませんね」
「ありませんね、じゃないだろ。お前の努力が足りないんじゃないのか」
「食事も睡眠も訪問のたびに念押ししているんですが…本人が『影快復』をこわがっているパターンでして…」

葉山の表情が変わった。

「なんでだ?」
「知りませんよ。PTSDの話もできません。カウンセリングも拒まれます」
「お前も担当は5人目だろ。厄介なケースを経験してもいい頃合いだ」

ポンポンと背中を叩き、去っていく葉山の背に文句をぶつける。

「葉山さーん、助言とかないんですかー?ほんとに厄介なんですよ!」

奏の声がむなしくフロアに響く。ため息をつき、データ整理作業に再び取り組んだ。


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【ネットニュースの罠】
わたしはネットでしかニュースを見ないのですが
あの『極限まで短縮した表記』はどうにかならないのかな…。
ニュースの概要を知らないと、まったくの意味不明になっちゃうのです。
いままでで一番印象深く、慄いたのは数年前、
『いきもの活動休止』。
すわ、地球も終わりか…!と数秒間、思考が停止しました。
……わたしの『極限までR18シーンを迂回している小説』が
お読みになってくださる方に『まったくの意味不明』になっていないことを願います。
ひとのふり見て我がふり…直せるかな…(苦笑)

【2014/08/21 09:43】 | ひかりのひと
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