FC2ブログ
秩序のとれた海 例えば君とふたりで
―…彼がつくった『庭』から、もうずっと出られないのはどうしてなのでしょうか。ぼくは彼の『庭』のなかで、最期を迎えるのでしょうか。ええ、でも、そうですね。それも本望かもしれません。綴り始めましょうか。ぼくと、彼の物語を。

『廃園設計士』という仕事をご存知でしょうか。
たぶん、ご存じないでしょう。あんな風変わりな職業の従事者がそうそういるとは思えませんから。とにかく、彼はあの生業で生計を立てていました。
彼は『庭』が『滅びゆく過程』を生み出す天才でした。

もうずっと長いむかしのことですね。『廃園』に人の心を癒す働きがあることが科学的に実証されたのは。うまく『滅んだ』廃園であればあるほど、そこにいることでリラックス効果が得られると。
あちこちに『廃園地』が建設されましたが、どれもこれも彼のデザイン・設計、そして『滅び』のプランニングによるものでした。

『滅び』に寄り添って、人はずっと生きてきましたね。何度も何度も『人類滅亡』の噂がたったのも、人が『滅び』を好む種族であることの証なのでしょう。
『滅ぶ』と言われながら『滅べ』ない人という生きもの。その憧れを具現化したものが『廃園地』でした。

******

ランキングに参加させていただいております。

ブログランキング・にほんブログ村へ
スポンサーサイト

【2014/10/27 09:44】 | 廃園設計士
|

栞さんへ
砂凪
こんにちは、栞さん。

はい、なぜか庭のお話です。
ガーデニングが趣味なんですよね(笑)
で、庭のお話。というわけで、気合入れていきますー!

どうぞ、わたしのことも気軽にお呼びください!

また読んでくださるとのこと、嬉しいです。
いつでもいらしてくださいね。お待ちしております。

日高千湖さまへ
砂凪
こんにちは、千湖さん。
最近はもっぱら『書くほう』に没頭してしまい、ブログ巡りツアーができていない砂凪です。
インプットとアウトプットのバランスを取ることを今後の目標にしたいと思います…。

いつも、『ふしぎな世界』しか描けないわたし…。
日常のお話が書けるみなさんを尊敬します!

タイトルがそのまんますぎやしないか…と内心びくびくしていたので、そうおっしゃっていただけて嬉しいですー。

はい、いつでも門扉を開けておきます!
千湖さん宅にもまた、遊びに伺いますね✧

こんばんは
草木栞
今度は庭のお話なのですね。
楽しみです。

私のことは、気軽にお呼びになってください。
私も砂凪さんと呼ばせて頂きたいです。

また読ませていただきます。
失礼いたします。

こんにちは♪
日高千湖
こんにちは!いつもご訪問ありがとうございます♪

砂凪さんの不思議な世界が始まりましたね!

とても興味深いタイトルですwwwまた、来ますね♪

コメントを閉じる▲
ああ、彼とぼくの物語、ですね。
恥ずかしながら、ぼくの一目惚れでした。
はじめは彼の設計した『廃園地』のデザインへの。それから次第に、彼自身が内に抱えた『滅び』への。ぼくも人ですから、どうしても、『滅び』を…それもうつくしい『滅び』を…抱えたものに惹かれるのは仕方のないことです。

彼が同性であるということに戸惑いを覚える以前に、本能が告げました。これはうつくしいものだ、と。
どうしても、どうしても、触れたかったのです。この手で、この身体で、彼のなかの『滅び』に。けれど、あの日までは…どうしても言えませんでした。あなたのなかの『滅び』を教えてください、と。

ぼくは造園師です。
植物は、好きです。呼吸と光合成を繰り返し、葉緑体で酸素を生み出し、ひとりで生きるというところが。
ぼくには決してできません。『滅び』にあこがれるように植物にもあこがれています。
だから、ここでこの世の果てを迎えようと、それ自体は苦ではありません。ただ、ひとりでいることは苦痛です。だから、こうしてだれにともなく遺書のようなものを書いているのです…設計図の裏に。

植物が好き、というぼくの理由の本質を彼は見抜いていました。そして、大勢いた廃園専門の造園師のうちでも、とりわけぼくに『造廃園』を依頼してくれたのです。
『ひとり』、というのはどこかで『滅び』に似ている気がします。退廃的なのにうつくしい、という点で。

******

ランキングに参加させていただいております。

ブログランキング・にほんブログ村へ

【2014/10/28 09:54】 | 廃園設計士
|
『造廃園』。廃園を専門とする造園師。ぼくらは最初から『廃園』となる運命の庭を作ります。
彼の仕事は庭の『滅び』の流れをプランニングし、一番きれいな形の『滅亡』を生み出すことでした。

彼の抱える『滅び』の一部を垣間見たのは、ぼくがつくった庭の桜が咲いた夜でした。
造園の進捗度の視察に来た彼は、桜を見上げてぞっとするほどさびしげな顔をしました。あの表情がなんだったのかは…いまでもわかりません。
それでも、業務上のいくつかの会話を交わし…気後れするほど彼はぼくの腕を買ってくれていました…彼が造園中なのに既に『滅び』の匂いのする庭を後にしようとしたときです。ぼくの口から自然に、するりとことばが零れました。

「ぼくは…、もしかしたら、深澤さんのことがとても好きなのかもしれません」
深澤、というのが彼の名です。彼は苦笑して言いました。
「それは、また随分と突然ですね」
「……すみません」
穴があったら入りたい、とはこのことです。

彼は困ったようにわらいました。
「ふつうは、前触れとか、そういうものが、あるんじゃないかと」
ぼくは言いました。ずっと、彼のデザインに潜む、彼の抱える、『滅び』に惹かれていた、と。

「他者の『滅び』に触れることがどういうことなのか、わかって言っていますか?」
彼は一言だけ、そう念押ししました。

******

ランキングに参加させていただいております。

ブログランキング・にほんブログ村へ

【2014/10/29 09:23】 | 廃園設計士
|
他者の『滅び』に触れること。
それは、その人から離れられなくなる、ということです。その人が唯一の存在になる、ということです。
…ぼくが望んでいたこと以外のなにものでもありません。

ぼくが頷くと、彼はぼくを手招きしました。建設中の『廃園地』に鍵をかけ、園地からふたり、歩いていきました。その園地のほとりには池があって、月がたゆたっていました。

いっしょに古い喫茶店に入りました。時間の流れから完全に取り残されたような、喫茶店でした。彼はコーヒーを、ぼくはココアをそれぞれ注文し、ウェイターがこちらに背を向けたとき、彼はぼくが無造作にテーブルのうえに置いていた手に手を触れました。

瞬間、体中の力が抜けました。彼の『滅び』に触れた瞬間でした。

彼はどこにいても、『廃園』が終焉を迎える音を聴いていました。
「ほら、また聞こえましたよ」
ぼくには聞こえませんでした。ふたり、隣同士、薄闇を見上げていたのに。

「きみとはおなじ『滅び』を共有しています。そのうち、きみにも聞こえますよ」
ぼくの沈黙が不安なのだと正確に汲み取った彼はそう言って、ぼくの上に覆いかぶさり、そのまま抱きしめてキスしてくれました。
彼の背中に手を回し、朦朧としていく視界のなかで口づけに応えながら、彼の内に潜んでいる『滅び』の奥行きを測りました。
探っても探っても、手の届かない答え。手の届かない憧れ。
……恐怖をかき消すように、ぼくは彼の名を呼び、何度も彼を受け容れました。もっと彼の抱く『滅び』を、と。

******

ランキングに参加させていただいております。

ブログランキング・にほんブログ村へ

【2014/10/30 09:39】 | 廃園設計士
|
―…いまでも、思いだします。恐怖のなかの快楽を。身体中が震えるほど痛切に。あの感覚こそが、『滅び』なのかも、しれません。

彼とぼくのあいだに『未来』は介在しませんでした。
それは、そうですね。互いに『滅び』を、『廃園地』を作るものでしたし。
それに、ぼくは『未来』を望んではいませんでした。望んではいけない、求めてはいけない、そう思っていました。

『未来』がもし、ふたりの間に芽生えたら。彼の持つ『滅び』を穢してしまう気がしていました。それだけは、どうしても回避しなければなりませんでした。彼の『廃園地』で心癒される人たちのためにも、なにより、ぼく自身のために。

けれど。
彼にとってはどうだったのでしょう。いまでもわかりません。
彼にとって『未来』が必要だったのか、そうではなかったのか。
もしも。彼が愛したのが女性で、その人との間にこどもが生まれていたのなら。
ぼくが彼との『未来』を、約束を、求めていたのなら。
彼のたどった運命は、『未来』は、相当にちがったのではないか、ぼくが彼を彼の『滅び』に追い込んだのではないか。いまでも、ずっとそう思うことがあります。

彼があの図案に取り組み始めたのは、あの桜の夜から5年の歳月が流れた頃のことでした。彼が今まで取り組んでいた、どんな図案ともちがっていました。
人の感じるすべての感情の根幹をむき出しにして晒してしまう。そんな図柄だと、ぼくには思えました。
彼の描く『滅び』にはいつもどこかおだやかさがあったのです。けれど…あの図面にはおだやかさの欠片もありませんでした。けれど、ぼくはあの図面を見るたびに、すっとどこかに吸い込まれる感覚がしました。

そうですね…まるでこの上なくうつくしい、禍々しさを見るような。

******

ランキングに参加させていただいております。

ブログランキング・にほんブログ村へ

【2014/10/31 09:01】 | 廃園設計士
|