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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
「ニラさん、俺、あした『ドナドナの日』だから」
「あ、じゃあ、梢さんのところには午後からの《おくやみ》ね」
新崎はときどき、山道を延々、牛を牽引して下り、肉牛の競りに出しに行く。称するところ『ドナドナの日』。
その日は、仲間のトラックが村まで迎えに来てくれるそうで、しかし、新崎が言うところの『ドナドナカー』が入ってこられるのは村の入り口までだろう。
集落の出口までは相当な距離を歩かなければならない。

「高値がついたら連絡するから、役場の仕事が終わったら飲みにおいでよ」
「俺は関係ないでしょ」
「だって、タダで酪農場の仕事、手伝ってくれてるし」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
新崎の牛には結構な高値がつく、らしい。彼の牛に対する態度を見ていれば、それもそうだろうと思う。

案の定というかなんというか、その日の夕刻、新崎から役場に電話があった。
しかし、黒電話のむこうの声は緊張し、張りつめていた。
「ニラさん、手を貸してもらえないかな」
「なにかあったの?」
「難産の仔牛がいて、連絡取れるのがニラさんしかいなくて、俺ひとりじゃどうしようもない」
「獣医とか、農協とかは?」
新崎が困ったような声で言った。
「獣医の椎原さんは今日はてんてこ舞いで連絡が取れない。満月の日だから、やたら仔牛が生まれるし。農協の今日の当直は農作物関連のひとだし……」
「俺が行って、なんとかなるものじゃないでしょ?」
今度は受話器の向こうのひとは穏やかにわらった。
「だって、ニラさんがいれば、俺だって頑張れそうだし」

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【2015/11/01 10:11】 | 棺入村、《おくやみ課》
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死の危険を感じながら、急坂を軽自動車でアクセルを思いきり踏み込んで登っていく。
周囲の暗闇がしんしんと迫ってくる。一歩間違えれば雑木林に転げ落ちてしまう。
「どうして街灯がないんだよ……」
頼れるのはヘッドライトのみの道のりを、なんとか新崎の農場まで辿りつく。

「ニラさん!来てくれたー!」
新崎が作業着で牛舎から駆けだして来た。
急いで着替えると、彼のあとにつづいた和晃は目の前の光景に内心で悲鳴をあげた。
雌牛の尻から仔牛のものだと思われる足が半分ほど見えている。この世のものとは思えない。
誕生とはかくもおそろしいものなのか。

「ニラさん、この縄を引っ張って!母牛がそうとう衰弱してるから、かなりまずいんだ」
手渡された縄のその先を見れば、仔牛の足に括りつけられている。
「……帝王切開とか、ないんだ」
「あるけど、俺には少なくともその技術がない」
母牛の様子を見ていた新崎は和晃の前に立ち、指示を出してくる。
「いい?ニラさん、俺がせえの!って言ったら、一緒にこの縄を引っ張るんだ」
半ば、思考停止状態のまま、頷く。唇を噛んで母牛の様子を見ていた新崎のせえの、に合わせ縄を引く。

「ニラさん、もうちょっと力でない?」
「え?そんな思いっきり引っ張っていいの?」
「もう、渾身の力でお願いします」
がんばれ、と新崎の声がした。その眼は必死に母牛とたった今生まれ来ようとしている命を見つめている。
すこしずつ、仔牛の身体が現れる。

手に巻き付けた縄のあとが赤くなるころ。
「もう引っ張らないで大丈夫だよ、ニラさん」
新崎がホッとしたように短くいった。
「ほら見て。生まれる」
するり、生まれおちる仔牛。柔らかにうずたかく積まれた藁の上に落ちた。

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【2015/11/02 08:53】 | 棺入村、《おくやみ課》
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小太郎さんへ
砂凪
小太郎さーーーん(汗)
こんにちは!

コメントに全く気付きませんでした。。。ほんとすみません。

リアルですか!?うわぁ、嬉しいです。
結構頑張ったシーンなんですよね、実は(笑)
必死さが滲んでいたら嬉しく思います。

梢ちゃん、がんばりました~☆


那須の小太郎
絶妙にリアルな描写ですね(@_@;)

思わず手に汗握る光景です!
梢ちゃんガンバ(^。^)

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新崎と和晃は柵にもたれ、生まれたばかりの仔牛とその母牛を眺めながら、ぽつりぽつり、会話を交わす。
「生まれてくるのも、産み落とすのも、大変なんだな」
「そうだねー、ここの母牛はみんな頑張ってるよ」
新崎は作業着の腕に顔を埋めて、わらった。
「生まれて死んで、その繰り返しだよ。大雑把な流れはさ」
「そうだな」

そのとき、牛舎の窓から白い光が差し込んで来た。
「あ、梢さん、今日は満月だって……」
「そうだった。月、見に行く?」
連れ立って牛舎を出る。背後では懸命に仔牛が足を踏ん張ろうとしていた。建物の外は、月の光に等しく照らされている。

「あー…、なんか、夜の空見るの、ひさしぶりかもしれない」
和晃のことばに、新崎がわらった。
「都会のひとみたい」
「村のものですが、なにか?」
和晃が返すと、新崎は今度は声をあげてわらう。笑い声が止んだと思うと、彼は真剣にこちらを見ていた。
「ニラさんが、いてくれてよかった」

新崎のことばがひそやかに心に沁み入っていくのを、ただ黙って和晃は感じていた。
ゴム手袋をはめたままの手のうえに、新崎の手のひらが重なる。手を重ねたひとは、横顔に戻って言う。

「ニラさん、俺のこと怖くないの?」
「……怖い?」
「だって、俺ゲイだし。ニラさんのこと、好きだ好きだ、って言っているのに」
しばらく考える。
「怖くは、ないなあ……」
理由を知りたい、と新崎の無音の声が空気を伝わってくる。和晃は微かに笑いの混ざった声で言う。
「だってさ、梢さん、俺のこと襲ったりしないでしょ。できないでしょ」
「まぁ、ね」
新崎もわらう。穏やかな夜が過ぎていく。

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【2015/11/03 09:06】 | 棺入村、《おくやみ課》
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生まれた仔牛の右足に障害があるのがわかったのは、それから数日後だった。
農場に行くとがっくりしていた新崎は、和晃を見て思いがけないことを言った。
「ニラさん、この牛のこと育ててみる気、ない?」
「……俺が?」
「いない間の世話は俺がもちろん俺がやるけど、この仔牛、ニラさんのにしてみない?」

―……大切なものはいらない。最初から手にしていなければ、失うこともないから。

でも。
「梢さんがくれるなら、俺、育ててみたいかも」
生まれおちた仔牛を見たときの気持ちを覚えている。
7つのこどもだったころに壊れたなにかを補って有り余るほどの、なにか。あの月の夜、自分のなかで変わったもの。
「ほんとー!?よかったぁ」
新崎が満面の笑みを浮かべた。じゃあ、名前だ名前!と言う。
「フローラみたいな、外国風はやめようよ。純和風の名前、なんかない?」
和晃の提案に、新崎が即答した。
「ミホコ」
「え、この仔牛、女の子?」
「うん。《未》だ《歩》けない《子》、でミホコ」
そうか、と和晃は呟いた。
「まだ、歩けてないもんな、こいつ」
「歩けたら、改名するということで」
新崎と並び、名付けたばかりの仔牛に頑張れよ、と呼びかけた。呼びかけられた生きものは干し草のうえで眠っている。

ミホコは足の障害を除けば、順調に育っている。母牛の乳を飲み、眠り、歩けないなりにもぞもぞと身動きする。
その姿を見るたびに、和晃は遠い昔に諦めて捨て去ったものを、もういちど信じてみたいような気がしていた。

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【2015/11/04 11:00】 | 棺入村、《おくやみ課》
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それなのに。

週末に《おくやみ》のためではなく、ミホコの様子を見るために新崎の農場を訪れるようになって数カ月。
だんだん新崎の術中にはまったのではないか、と疑い出したころ。
日曜日に新崎の家で作業着に着替えた和晃を、一緒に義足の相談をしながらミホコのもとに向かっていた新崎が牛舎の入口で止めた。
「ニラさん、今日は帰って」
「……なんで」
「いいから、帰って」

その横顔が引きつっているのに嫌な予感がして、牛舎のなかを新崎の肩越しに覗きこむ。
ニラさん、ダメだって!という声は聞こえないふりをした。ミホコが、仔牛用の囲いのなかで倒れていた。

「ミホコ!」
掴もうとする新崎の腕を振り払い、ほとんどぶつかるようにして柵のむこうに呼び掛ける。
「どうした?」
後ろから、静かな声がした。
「だから、帰って、って言ったのに。ミホコ、あの世に逝っちゃったみたいだ」
「なんでだよ。きのうはあんなに元気だったじゃないか」
「仔牛のときは、こんなふうに突然死することもあるんだ。もともとミホコ、右足が悪かったし、難産だったし……」

新崎の声が消えて、それからちいさく流れた。

「ごめんね、ニラさん」
「……なんでだよ」
なんでだよ、としか言えない自分がひどく幼く思えた。
ほら見たことか。手に入れなければ、失うことはないのに。わかっていたはずなのに。
「ほんと、ごめん」
謝る新崎にも腹が立った。弱点を思いきり鋭い刃物で切りつけた張本人に謝られているようで。

低い声で和晃は言った。
「謝られるようなこと、された覚えはないから」
「でも」
「もう一回謝ったら、ぶん殴る」
声を塞がれた新崎は、黙って柵の扉を開くと仔牛に歩み寄る。ミホコの遺体を撫ぜながら、眼で和晃を呼んだ。有無を言わせない力だった。鉛のような足を引き摺って、ひとりと一匹に近寄る。

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【2015/11/05 11:26】 | 棺入村、《おくやみ課》
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「ほら、ニラさんも撫ぜてあげて」
手首を掴まれる。のろのろとしゃがみこみ、ゆっくりと手が亡骸に触れた瞬間、その冷たさに涙が零れた。
新崎に抱き締められるのがわかった。不思議と、嫌悪はなかった。むしろ、このまま抱き締めていてほしいとさえ思った。
だって。

―……だって、だれも、あのときはこんなふうに抱き締めてくれなかったし、一緒に泣いてもくれなかった。

和晃のなかの7つだったころの記憶が言う。
あのとき。信じていたものが、疑いもしていなかった大切なものたちが偽物だったのだと知ったとき。
きっと、自分はこうやって抱き締めてほしかったのだ。

「梢さん」
「なに?」
「……もう少し、こうしていて」

新崎の手が和晃の髪に触れた。ちいさな声がした。聞きちがいでなければ、大丈夫だよ、と聞こえた。
あのとき、この優しさと温もりがあれば、自分は。
新崎が身体を離し、おどけた口調で言う。
「作業着越しっていうのが惜しいけど、ニラさんをハグできたー」
「それで充分です。むしろ、南極越冬隊の装備越しでもいいです」
軽く笑うと、くらりと口調を変えて、真面目な顔で新崎が覗きこんでくる。
「大丈夫だから」
「うん、知ってる」
新崎が牛舎に取り付けられた電話で獣医を呼ぶのを聞きながら、いつか新崎が言ったことを思い返していた。
『生まれて死んで、その繰り返しだよ』
「ほんと、そうだな……」
呟きは風に乗って流れ、だれに聞こえるでもなかった。

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【2015/11/06 11:11】 | 棺入村、《おくやみ課》
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ミホコの一件を末延に話した。
興味なさそうに聞いていた遅刻大魔王は和晃が話し終えると「それで?」と言う。
「なんだか、俺、新崎さんとこでなにやってんのかわかんなくなってきた」
「お前の《おくやみ》はよく横道に逸れるからなぁ……」
坂崎さんの小学生の娘が亡くなったときも時間ばかりがかかったことを思い出し、和晃はがっくりきた。
あのときは当然ながら依頼主の嘆きようが半端ではなく、なにを言っても傷つけてしまいそうで怖かった。

「でもさ」
末延は書類にペンでなにやら書き込むのをやめて、というのも《おくやみ課》にはパソコンが導入されていないからなのだが、なにかを見抜いたように言う。
「ニーザキちゃん、あの牛のことではもう嘆いてないんでしょ」
「まぁ……、そうかも」
「じゃ、《おくやみ》も終わりじゃん」
そうだった!と叫んだ和晃に呆れ果てた視線をあて、末延はため息をついた。
「お前、根本が間抜けだよね。あとは報告書を書けばいいだけだろ。もうニーザキちゃんに関わることもない」
「でも、気になるんだ。あのひと、《しあわせがわからない》って言っただろ。なーんか、まだしっくり《おくやみ》終わり!って思えないんだよね」
「お前、自分がニーザキちゃんのこと、救えると思ってる?」
ザックリと自惚れを切られた気がした。

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【2015/11/07 11:00】 | 棺入村、《おくやみ課》
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ことばを失う和晃に、畳みかけるように末延は言う。
「ひとがひとを救うのは、そんな簡単な話じゃない。単純な話じゃない。世界はそんなに生ぬるくない」
「でも」
思わず言い募っていた。
7つの自分。あのとき壊れたなにかが、ミホコと新崎のお陰ですこしだけ息を吹き返した。だから。
「ひとを救えるのも、ひとだけだろ」
末延が顔をしかめた。
「お前って、根っからの善人だな。性善説信者だろ」
「それ、なんだっけ?」
もういいよ、と言う末延はしっしっ、と手を振る。すごすごと自分の机に戻る。莉久が身を乗り出してきた。
「末延先輩、容赦ないですねー。なんでかなぁ……」
莉久と一緒に末延を見る。ぼんやりと窓の外を見ているその横顔には、なんの表情も浮かんでいなかった。

新崎と村外れの池に出かけたのは、それから数日後のことだった。仕事人間の新崎に気分転換が必要だと思ったからだ。
弁当を作ろうと新崎の家で台所を借りた。台所の主は興味津々で眺めている。
「ニラさん、料理できるの?」
「……あぁ、まぁ、卵焼きくらいならがんばれば作れるだろ」
「なんだか、すごく怪しい……」
20分ほどのち。調理台の上には粉砕された卵の殻が堆積し卵液が広がり、ガス台は焦げ付き、フライパンの上では炭がくすぶっていた。
台所と居間を仕切っている玉のれんの下で和晃の必死の努力を眺めていた新崎が楽しそうに言った。
「ニラさんさぁ、すっごく壮大な料理をしてくれたねぇ。物質を原子レベルで変化させるみたいな……なんか、宇宙とか地球の起源に思いを馳せちゃうみたいな……」
「じゃあ、梢さんがやってみろよ」
10分後に白い皿の上でふんわりといいにおいをさせている『ザ・卵焼き』を見て、和晃は白旗を素直にあげた。
「すげえ、うまそう。ひと切れもらっていい?」
「弁当の分だからダメでしょ」
卵焼きだけをタッパーに詰め、新崎とともに軽トラに乗り込む。

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【2015/11/08 10:04】 | 棺入村、《おくやみ課》
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こんにちはっ!
ゆめなかば更新2回目☆
あしたっから、またバイトがはじまると思うと憂鬱な砂凪です。
週3バイトでさえこんなにgloomyなので、フルタイムワーカーのみなさまが神さまに見えますっ!
わわわ、一粒のコメどころか目を開けたら世界は神さまだらけ!!!

さて。
週3バイト、パラサイトフリーターの身の上のわたし。。。
ですが、かなりの程度、時間の融通がきくという点で、その境遇に感謝と土下座をしたい夢ができました。
既に、その夢のためにいちにち、6~8時間を費やしております。
(バイトの日はほとんど寝ません。。。)
その生活、夢ライフが始まって2週間が経ちます。
さらにしあさってくらいからは環境が整うので、さらに加速する予感。

きょうは夢は忘れていないけど、手を伸ばすことに小休止。
伸ばしてばかりだと、腕も疲れてしまうから。
躓いたところにもどって、ぐるぐるり。
やり直して、生きているように生きたいと思うのです。
(変な表現ですが、砂凪の実感としてはそんな感じ)

されど今更遅いかな。
囁くわたしもいますけど。

闘わずして、負けるなんて、わたしにはできっこない。

あらゆる手段を使い、憧れている「もの」になった方にお会いしてお話とアドバイスをいただきました。
つてを辿り、お世話になっていた方に、もういちどお世話になることになりました。
こりゃもう後には引けないな、頑張ろうぜ、ア・ゴーゴー。

というわけでして、《aquarium》の更新が間もなく変化します。
和晃くんと梢ちゃんのお話が終わり次第、村のランキングからは撤退いたします。
……BL小説の更新ではなくなるので。
ゆめなかば、夢追い日記と化しますので。
しかーーーし、たんまりとBLのにおいを乗せているブログを村のどこにやったらいいのかわかんないので、とりあえず、カテゴリとしてはここにいさせてください<(_ _)>

あと2週間くらいで、梢ちゃんたちのお話が終わりましたら。
毎日更新ではなくなりますが、気分転換がてら10日、20日、30日には『ゆめなかば』更新をします。
(広告よけを兼ねまして……)
その際に奇跡的にコメントをいただければ、つぎの更新日にお返事させていただきます。

長いトンネルだったね、わたし。
入り口と出口がおなじ、騙し絵のようなトンネル。
だけど、壁を壊せたら、トンネルの呪いは魔法に変わる。
毎日をキラッキラさせてくれる、魔法に。

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【2015/11/08 15:47】 | ゆめなかば
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小太郎さんへ
砂凪
こんにちは~~~。
返信がありえないほど遅れてしまい、申し訳ありません。。。

現実の夢に向かい、邁進中ですー。
めちゃくちゃ忙しい日々ですが、比例して充実しています。
ただ……息抜きの方法がわからず、あと、偏頭痛が癖になって、それだけしんどいですね。

まぁ、睡眠時間6時間、夢時間(寝て見る夢じゃないですよ!)10時間、くらいの割合ですね。
その他は体力づくりの散歩やらなんやら、しています。
心身ともに健康なので(お薬のお世話にはなっていますが)ご安心くださーい☆

こんにちは。(^o^)
那須の小太郎
砂凪ちゃんは現実の夢を
追いかけられるところまで進歩したんだね!
夢に立ち向かっていると充実しますでしょう。

頑張りすぎて体を壊さないか、それだけが心配です(。・・。)
心と体の声に耳を傾けながら頑張ってくださいね(^_^)/~

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車の助手席で新崎はあれやこれやと話し掛けてくる。
「久しぶりだなぁー。車でこの山下りるの」
「じゃあ、梢さん、普段の買い物とかはどうしてるの?」
「歩いて山下りてだよ、ふつうに。俺、免許ないから」
ゆうに片道3時間コースである。このひとの、スペクタクルな時間感覚はどうなっているのだろう、と内心で思う。

車は山を下り、さらにしばらく村はずれへと向かう。
「池があるのかー。知らなかった」
車から降りた新崎は背伸びしながらのんびり言う。
「池っていうか、泉みたいなところ。すげえきれいなの。梢さん、見たことないだろうな……って」
先を行く和晃の後をついてくる新崎は楽しそうだ。
けもの道のような細い道を30分ほど歩くと、急に視界が開けた。
「ほら」
手を伸ばし、澄んだ水をたたえる透明な池を指し示す。素直に感嘆の声をあげる相手に連れてきてよかった、と思う。
卵焼きを広げ、村に3軒しかない商店で買ってきたパンを投げると、新崎は器用にキャッチした。
「ニラさん、これ奢り?」
「うん、色々あったし、お礼ね」

パンの袋を開けようとしていた新崎の手が止まる。
「どうした?」
問うと、ぼんやりと池の方を見ている。
パンの袋を片手に池の端まで歩いていくと、小石を拾い池に投げた。微かな声がした。
「俺、ここに来たことある」
「え?」
「ずっと昔。父親が生きてた頃、家族で。こうして、父親が小石を水に投げてさ、そしたら水面で跳ねたんだ。俺、すごいなぁ……と思って、でも忘れて……どうしてかな、家族で出かけた数少ない記憶のひとつなのに」
新崎が和晃に向かって弱くわらった。
「しあわせだったころの記憶も、案外簡単に忘れちゃうんだね。想い出を両手に持ち切れなくて、困ったな、どうしよう、って歩いてきたはずなのに」

水面が反射する光を顔に受けながら、新崎は静かに言った。
「やっぱり、ちがうのかな」
「え?」
池を見ているひとの横顔には、なんの表情も浮かんでいなかった。ぞっとするほどの無表情。
「昔の記憶に寄りかかってなんとか生きるのは、ちがうのかな」
なにも言えない。ことばが見つからない。とりあえず昼食を、という言葉さえ和晃は発せられない。
小鳥が鋭い鳴き声を発して飛び立った。
新崎が振り返って、わらった。
「ニラさんのそういうとこ、俺、好きなんだと思う」
ひどく優しい眼をしていた。心臓が妙な跳ねかたをする。
「……え?」
「真面目にひとと向き合おうとするところ」
地面にむかいあって座り、パンの袋をガサガサやっている。和晃は相手に気取られぬように、細く長く息を吐いた。

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【2015/11/09 11:24】 | 棺入村、《おくやみ課》
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