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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
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頭がむずむずして手をあげると、眼が醒めた。
薄暗い天井、消毒液のにおい。ざわざわとそれでも静かにひとの行き交う気配。病院?あ、病院だ。と、思った。
「雨多……」
茅野さんが呆然と僕のベッド脇のパイプ椅子に腰かけていた。
そっと、あげた手を取られる。

「雨多、ごめん。ごめんな。今更かもしれないけど、本当にごめん」
茅野さんは静かに言った。静かな声は、震えていた。
「俺、おかしいんだよ。どっか、壊れてる。お前のこと、ちゃんと大事で愛おしいのに、それなのに…見ていると時々、粉々にしてやりたくなる。実際、何度もお前の気持ちもなにもかも、粉々にしたよな……。それなのに、お前はまた『茅野さん』って俺を呼ぶから。なにもなかったみたいに、俺にわらいかけるから」

うん、と頷いた。茅野さんが僕の手を額にあてた。

「ちいさなこどもや可愛い動物を見ると、ねじ曲がった気持ちが溢れるみたいに、俺、自分でもどうしようもなくなって……でも、雨多がいなくなるのは怖くて……怖かった、もう、お前が眼を覚まさないんじゃないかって」
わかりますよ、と心の中でだけ、僕は言った。
茅野さん、わかります。僕もあなたと同じ裁断機を抱えているから。

「俺、もうお前のこと、殴ったりしないから」
「うん」
信じたい。だれが愚かだと言おうとも。殴られることのない未来ではなく、茅野さんの変わろうとする意志を。
「信じてくれ、な?」
「信じます」

容易い希望も、お手軽な未来もなにもない。それでも、ことばで約束するしかないから。
茅野さんが僕の毛布を首まで引っ張り上げた。なに、と眼で問う。
「冷やしちゃ、いけないから」
うん、と僕はまたわらった。茅野さん、と呼ぶ。
「好きです」
うん、と茅野さんが僕を見て言う。
「俺も、雨多が好きだよ」

愚かしい生きものは、ことばで約束することしかできない。約束は、それでも『これから』だ。
守りたかったものを守りきった僕に、ほっとしながら僕は眼を閉じる。雨多、と茅野さんが名を呼ぶ。
続けていくためにことばしか持ち得ないふたつの気配だけが、部屋の中で静かに響いていた。

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【2016/03/01 07:30】 | 奈落の揺りかご
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ぶれこみさんへ
砂凪
こんばんは、ぶれこみさん。
返信が遅れましたこと、申し訳なく思います。

わたしには、これ以上この小説を書く勇気がありませんでした。
もう少しいろいろなエピソードを盛り込んだなら、かなり自分を削らないとダメなので、心の健康最優先です。

自分の生い立ちにも充分以上、暴力の影があるのでいつかは扱いたいテーマでしたが、いまはまだ無理でした。

「ことば」で許せるというところに、丸く収まるところに、わたし個人の祈りを込めました。
ひとはひとを許すことができるのだと。
わたしもあのひとを、いつかは許せるのだと、そのはずなのだと。

雨多サイドにいる(いた…?)人間なので、余計に茅野さんのことはわかりません。
ただわかっているのは、暴力は遺伝するというどうしようもない現実です。
わたしも、いつかだれかを傷めつけずにはいられなるかもしれないという恐怖です。

コメント、ありがとうございました。

ええっ、もう最終回か……。
ぶれこみ
 なんやら始まったばかりなのに、せっかくのアイデアがもったいないような気がするなー。もう少しいろいろなエピソード―を織り込んで中編くらいにすればよかったのに……。
 でも、最後の「言葉でしか持ちえない」云々は、安易なハッピーエンドに堕さずに、余韻を少し残す表現だね。ただ、無責任な読者の僕としては、茅野さんの残虐性をもう少し激しく鋭くしてほしかった。最後も、こんな丸く収めてほしくなかった。
 悪人に感情移入して書くのは本当に難しいことだけど、そういう困難な表現にするチャレンジ自体に意味があると思う。
 そういうことで、僕的にはちょっと惜しい作品かなと思います。
 では、また。

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客席の照明が落ちる。ダウンライトだけに照らされたジャズクラブは、暗すぎる水族館のようだといつも思う。
ドラムスの新さんの静かな叩きこみからバックバンドが演奏を始める。
内心だけで「はぁ?」と思う。リハのときのセットリストじゃない。
いきなり持ち歌かよ。しかも、あんな、のったりした曲調の、サビが高音域の。
うたったことがないから知らないと思うけど、喉を温めないとあんな高音は出せない。

無茶ぶりすんなや!と内心だけでぶつくさ言う。
そのあいだに俺の口から滑りだしているのは、フランス語の気だるい歌詞。ふざけて思いっきり下品な替え歌の詞をつけても客席のだれもが気がつかないにちがいないが、流暢な仏語を操るマスターの野々宮さんの眼光がリアルに怖いので、やったことはない。

突き落とされたこの世界 そこら中の青い空のなか
君の声を胸に突き立てて 蜻蛉みたいにわらってあげる

サビを静かに、でも声から艶が消えないようにうたいあげる。
客席からため息が聞こえる。がっかりしたときのため息じゃない。感嘆のものだ。
よしよし、と内心で思う。老若男女、この場にいる者全員、俺の声しか聴いていない世界。
この世界を漂う瞬間を、俺はなにより愛している。

たぶん、吹雪のような世界を漂うような、途方もない孤独から抜け出せるから。
胸のなかで吹き荒れる嵐のような『どうしようもないこと』からじょうずに眼を逸らせるから。

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4か月間ドロンして、ひさしぶりの長編です。
見苦しい点もあるかと思いますが、よろしくお願いします。

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【2016/03/02 07:30】 | Painkiller
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こんばんは。砂凪です。
ルールの乱れたオセロゲームのような更新ですみません。
ほんとは《Painkiller》の更新を始めるまえに、こちらを書かなくてはいけなかったのですが……。
書くべきだったんですよね……(苦笑)

この連載に関しては、自分でもなんといっていいのかわかりません。

書くべきか書かざるべきか悩んだのですが、書かせていただきます。

わたし自身、生い立ちに暴力の影を引き摺っています。
だから。
勢いだけで書きはじめてしまったこの作品。
この連載はデトックスであり、それと同時に自傷行為でした。
時々、書いている途中で作品世界からの帰り道がわからず、息の仕方がわからなくなったり、フラッシュバックしたりすることもありました。

暴力は連鎖し遺伝します。
だから、わたし自身、いつかだれかをひどいやりかたで、傷つけてしまうかもしれません。
自分でも無自覚のうちにもう、取り返しのつかない傷をだれかに負わせているかもしれません。
雨多が、翠ちゃんを傷めつける想像に駆られたように。

中途半端だというご指摘もいただきましたが、わたしにはこれ以上、この作品を書くことができませんでした。
時期尚早だったのか、永遠にこのテーマに向き合うのは無理なのか、どちらなのかはわかりませんが「いま」のわたしには少なくとも無理でした。
だから……なんだろう、すみません。としか言えないです。すみませんでした。
すこし、疲れました。

《Painkiller》は一転、穏やかな作品世界になっていると思います。
こちらもお楽しみいただけたなら、この上ないしあわせです。

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【2016/03/02 19:31】 | 奈落の揺りかご
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数ⅡBの授業が終わる。チャイムの音を目覚ましがわりに、眼前で堂々と居眠りをしていた頭がぬっと起き上がる。
「岸本、いまの授業のノート貸して」
居眠りしていた頭の持ち主、神谷くんが僕に向かって右手を差し出した。
まるで、それが当然の権利であるかのように。
「貸すけど、今日中に返して。試験が近いから」
「オーライオーライ。コピー室、直行してくる」
言うや否や彼は財布を鞄から取り出して教室を出ていった。
せめて、文字を書き写したほうが頭に入ると思うのは僕だけではあるまい。

思うに。
苗字というのは少なからず人生に影響を及ぼす。出席番号順に並んだ席、神谷くんと僕は前後席である。『カミヤ』と『キシモト』のあいだに、『カモダ』とか『キクチ』とか、とにかく緩衝材になってくれる名前があれば、神谷くんと僕にはまったく接点がなかったにちがいない。
しかし、喜ぶべきか憂うべきか、緩衝材抜きで彼と僕は接している。
主に、神谷くんが僕のノートをコピーさせてほしいとあらゆる科目で頼んでくる、という内容で。
というのも、神谷くんがすべての授業を睡眠時間にあてているからだ。
彼が僕のノートを欲しがるのには、それとは別に僕が常に学年一位をキープしているからという理由も、多分に含まれているかもしれないけれど。

ちょっとため息をついて、わらった。
俯いて、古文単語の小テストの勉強をしていると、とんとん、と頭をノートで叩かれた。ひとのノートを勝手に丸めないでほしい。
「ほい、ありがと。いつもわりいな」
神谷くんはきれいな顔立ちをしている。こうやってわらうと、それが一層際立つ。
「うん」
ノートを受け取る。彼との接触はこれにて落着。僕は単語帳に再び目を戻す。

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【2016/03/03 07:30】 | Painkiller
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ぶれこみさんへ
砂凪
こんにちは、ぶれこみさん。

と…とりあえず、幸先よく幕開けを褒めていただけて光栄です。
イントロみたいなものなのですが、これがいいのか悪いのか判断しかねていたのでほっとしました。
出だしの掴みだけでも「いいね」と言っていただけるのは嬉しいものですよー。

歌詞は、勝手に引っ張っちゃダメです。
著作権にひっかかりますので、ね。
というわけで自分で考えました。
フランス語で書ければよかったのですが、グーグル先生の翻訳機能があてにならないのは英語で痛感しているので、「日本語で勘弁してくださいね……」という万感の思いを込めました。

今後ともよろしくお願いいたします。
いつもコメントありがとうございます。

おはようございます。
ぶれこみ
 今回も、なにやら良い出だしだね。小説を書くときに、出だしは非常に大切だから、さなぎちゃんの作品はとても勉強になります。出だしの掴みが上手いよね。僕ではこのようには書けない。
 ところで、フランス語で歌われているという、バンドミュージックの音楽の歌詞は、自分で考えたの? 上手い歌詞だね、やはり砂凪ちゃんは詩才があるね、凄いです。
 今後どんな展開になっていくのかな、楽しみにしています。

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***

昼休み、ひとりで屋上に出る。給水塔の陰に隠れて、鞄に忍ばせていた日仏辞典を引っ張り出して、作詞を始める。
できのわるい男子高校生『神谷南友(なゆ)』から完全会員制のジャズクラブ『ネージュ』の専属歌手になる時間。
屋上に日本語詞を書きとめた紙切れと、それを途中まで訳したフランス語訳を並べる。風で飛んだりしないように、ペーパーウェイトを乗せる。

切ない、はなんだっけ?さー、しー、すー、せーと口にしながら辞典を繰っていく。
英語の授業は大嫌いである俺。でも、この翻訳作業は好きだ。
自分の書いた文章を自分で訳していくのは、すこし面映ゆくて背中のあたりがむずむずする。
三人称の動詞活用を野々宮さんにもういちどレクチャーしてもらわないと、また半分忘れかけている。マスターの呆れ顔を想像して、気分が重くなる。
いくら翻訳が好きだといっても、もともと学習能力にたけていない俺の頭を野々宮さんは本気で心配してくれる。

一瞬、席順が後ろの岸本の顔を思い浮かべた。あいつなら、一発で理解して吸収してしまうんだろうな。いいな、あいつの脳みそ。

切ない、を活用させる手をいったん止めて、岸本のノートのコピーを鞄から取り出した。
きれいな文字が並んでいる。頭がよさそうな文字だ。という感想は頭がわるい。

岸本の、紺色をしたフレームの眼鏡のむこうの、ひとのよさそうな眼を思い浮かべる。
馬鹿だなぁ、と思う。
これだけきれいなノートなら、一枚いくらで金を取ってもよさそうなものなのに。頭がいいわりに、抜けている。
ああいうやつが大人になってから、せこいやつらに利用されて、それにも気付かずにニコニコしているのだ。

ふっと、思い出しそうになって、首を振る。

ペーパーウェイトで岸本のノートのコピーを一緒にとめると、翻訳作業に戻った。
5カ月後の『ネージュ』オープン5周年記念パーティーに向けて、俺は新たな持ち歌を3曲作らないとならないのだ。
野々宮さんのいつものありえない無理難題である。俺は万能オルゴールじゃないっつうの。
でも、なんだかんだとその難題を呑みこんでしまうのは、野々宮さんの店を俺が好きだからだろう。

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【2016/03/04 07:30】 | Painkiller
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「ただいま」
学生鞄をあがり框に下ろして、屋内に呼び掛ける。
妹のなずなが、夕焼けの茜色に染まったリビングから顔を出すなり、顔をしかめた。
「お兄ちゃん!ダサいから、鞄いっぱいに教材詰め込んで帰るのやめて」
「仕方ないだろ。男子高校生は女子中学生にはわからん、深刻な試験を倒すのにいっぱいいっぱいなんだ」

リビングに足を踏み入れながら申し述べると、赤いブックバンドで教科書を束ね、本人いわく《小粋》に中学に登校するなずながニヤッとわらった。

「エロいこともできないくらい?」
「なーずーなー…」
僕は妹の両頬をつまんで引っ張る。
「中学生の女の子が男子高校生の悲しすぎるエロ事情に口を挟むんじゃないよ」
頬を引っ張られたまま、なずなが真顔に戻った。

「試験、そんなに大変なの?わたし、本気で高校行きたくないなぁ」
「楽しいこともそれなりにはあるから、頼むから、そろそろまじめに高校受験がんばってくれ」

我が家に高校受験という暗雲を運び来る妹本人はのんきなものである。わたし、マイナスのつく因数分解がいまだにわからないんだよねぇ…、という不穏な発言を残し、なずなは自室に足を向けた。
共働きの両親がわりになずなの面倒を見てきたが、僕はどこで道を踏みたがえたのだろう。半ばわらいながらため息をついた。

冷蔵庫を覗くと、レンジで温めるばかりになったシチューがふた皿。……と、手帳とペン。
これは母親の悪癖で、台所でバタバタしているとき、冷蔵庫にありえない忘れ物をして出社してしまう。
延滞しかけたレンタルCDが冷蔵庫のなかから発見されたときは、呆れるを通り越して感心してしまった。それ以来、母親の失せものさがしはまず冷蔵庫をあたってみるのが賢明だとみんなでわらった。

『手帳とペンが冷蔵庫で冷えています。困っていたら連絡を』

母親にメールして、迫りくる試験の対策を立てるため、なずなの部屋の隣の自室へ向かった。

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【2016/03/05 07:30】 | Painkiller
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学校帰りに、県立病院に寄った。白い建物を見上げる。
白。死の色、終焉の色。だって人間は最後、白い骨に帰るのだから。
軽く唇を噛んで、院内に足を踏み入れた。途端にがらりと空気が変わる。ひんやりと、でも確かにそこにある、《なにか》。
踵を返したくなるのを我慢して、エレベーターホールで5階ボタンを押す。なかなか来ない箱。

両親が交通事故に遭い、父親は帰らぬひととなり、母親は意識不明の昏睡状態に陥ったのは、俺が中学卒業と高校入学のあいだのなんともいえない宙ぶらりんな時間を持て余していたころ。
思いきり背伸びして受けた高校の合格祝いに、俺がほしがっていたメーカーのシューズを買いに行った帰りだった。信号無視のトラックを避け損ねた。
自宅で警察からの電話を受けた俺は、おいおいなんのドッキリだよと思い、まじで?と思い、嘘……と受話器を取り落とした。

その後のことは霞がかったような記憶で時系列も詳細も曖昧で、気づけば俺はなにもなかったような顔で高校生とジャズクラブの専属歌手をやっていた。

頼れる親族の類はいなかった。いきなりひとり放り出された俺。
だれもいない家の空白を胸がひりつくような思いで過ごすのなら、シンガーとして舞台に立っているほうが数百倍、数千倍マシだ。
それに、他人事のように話した俺の両親のことを、夜中に家にいたくない事情を、野々宮さんも新さんもベースのタムリンもピアノの由果姉さんも、本当に胸を痛めているんだな、というのが伝わってくる表情で聞いてくれた。ひとりで背負うには気が狂いそうに重い荷物。すこしくらい、他人に預けたっていいじゃないか。

やっと降りてきた箱に乗り込む。5階まで停まることなく上昇する。ナースセンターの看護師さんに軽く頭を下げて、母さんの病室を目指す。

『神谷野絵(のえ)』のプレートのかかった病室のドアをノックする。決して、決して応答のない音が響く。
そっと扉を開け、呼びかける。
「母さん、きたよ」

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わらってなきゃダメって、どうして言うのかな。
はがれなくなった笑顔でなんだか疲れちゃった。
……それでも命一日分、きょうも頑張らなくちゃ。。。

【2016/03/06 07:30】 | Painkiller
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ぶれこみさんへ
砂凪
こんにちは、ぶれこみさん。

きれいにまとまっている……!うわぁうわぁ、ありがとうございます(*´艸`*)
はいはい、印象派の絵が好きです。
あと、ご明察の通り近眼めがね女です。
なんかもう、コンタクトじゃ追いつかないレベルの近視らしい。

ほんとに苦労の連続なんですよ。
このあとのお話、ストックゼロですし。
もう、「ストックゼロ」っていう小説書いちゃおうかな。
どうしよう、ほんとに(笑)ネタが全然ないんですー。

なんか愚痴ってすみません。
ではでは、またまた~☆彡


ぶれこみ
 おはよう、砂凪ちゃん。
 あまり僕のようなものが偉そうに言うことでもないのだけど、敢えて言わせて戴ければ、ここまで、各場面がコンパクトにまとまっていて、とても綺麗にまとまっていると思います。でも、なんとなく思ってのは、この前も言っていた風景の描写が少しぼやけていて、絵画で言えば印象派的な、悪く言えば曖昧な描写の仕上がりになっているような気がします。思ったのは、砂凪ちゃんは近視なのではないかと(たしか近眼だったよね)。
 まあ、いつでも読者は作者の苦労を知らずに、無責任な発言をするものなので、あくまで参考までに留めておいて戴けたらと思います。
 では、また。

 

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***

僕のノートですべての授業をまかなっている神谷くんが、唯一真面目に、むしろ一生懸命に……といってもいいくらいに取り組んでいる教科。芸術系選択科目の音楽である。
神谷くんの歌声がとてもきれいであることに気がついたのは、一学期の独唱テストでだった。
『マイ・ボニー』が課題曲だったのだけれど、ピアノの傍で“bring back my bonnie to me”とサビをうたいあげるその声に、だれだろう…と顔をあげるともっとも想像していなかった人物、神谷くんが壇上にいた。

「岸本?」
ピアノ伴奏していた音楽の石津先生の声になんですか?と問いかけた。
「なんでお前、泣いているんだ?」
「え?」
「神谷の歌に感動したのか?」
自分の頬に手をやり、涙が流れていることに気がついた。
「……ちがいます」

それから、嘘をついた僕はこっそり神谷くんの歌声をさがすようになった。
合唱コンクールの練習の混然とした声のなかから、カルテットテストの四人組のなかから。
彼の声を見つけるのは、さほど難しくなかった。ごろごろ転がる小石のなかに、ひとつだけ光る石を探すのと同じ感覚。

その度に心が切なく引き絞られるような感じがして、でもそれは《感動》なんていう言葉で括れるものじゃなくて……。息がつまるほど、苦しくなるほど切々と心に訴えかけてきて……。
自分の、勉強以外での語彙力のなさが情けなくなるほど、神谷くんの声は僕のひそやかな楽しみになった。

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【2016/03/07 07:30】 | Painkiller
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岸本のノートのコピーを自宅で引っ張り出した。
『ネージュ』に出る前にすこしでもさらっておかないと秋の期末試験が深刻にピンチである。
赤点で留年…、なんて事実が野々宮さんにばれたら、『ネージュ』でうたわせてもらえなくなる。
岸本のノートはわかりやすい。ひょっとしたら、教師の子守唄を真面目に聞くよりよほど。
ベクトルの問題を自分のノートに書き写しながら、俺の残念な脳みそはそれでも少しずつ、知識を吸収していく。

岸本の文字は音譜のようだ。きれいに並んで、メロディを奏でているような。
だから、岸本のノートで勉強するこの時間が、決して俺はきらいじゃない。ベンキョーなんてくそくらえ、と思っていた俺がそんなことを思うなんて、奇跡的すぎて涙が出る。

数学の区切りがつかなかったので、舞台裏の僅かな照明のもと、展開式の応用問題での答え方を睨んでいると、由果姉さんの声がした。

「南友、勉強なんて珍しいね」
「今度の期末試験がピンチなんですよ。数学が全然わからなくて」
「すこしノートをみせて」
細い指にノートを手渡すと、さっと眼を走らせた由果姉さんが微笑んだ。
「これ、南友のじゃないでしょ」
「なんでわかるんです?」
「わかっていないと、このノートはとれないわ」

それから、演奏が始まるまで細い指はあれこれと応用問題を教えてくれた。さらさらの長い髪がときどき頬に触れるのにどぎまぎする。
『ネージュ』で過ごす夜。日めくりカレンダーの裏側に生息しているような俺。
きっと、岸本は表側で生きているのだろうと思うと、ノートの文字がやたら遠く思えて、なぜか悲しくなった。

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【2016/03/08 07:30】 | Painkiller
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進学塾で返却された模試の結果、第一志望のW大学はAランクだった。ほっと胸をなでおろす。
まだ高2だけれど、暗澹たる大学受験地獄はそろそろはじまろうとしている。
というのも、先生たちが呪いのように口をそろえて曰く《2年生の3学期は3年生のゼロ学期》。なずなのいうこともあながち間違いではないのかもしれない。

今年は妹の高校受験で暗雲立ち込める我が家に、来年は僕の大学受験という真っ黒な雲海が押し寄せる。
はぁ、とひとつため息を落とすと背後から背中を叩かれた。
「なんだよ、辛気臭い顔して」
塾友達の梨木くんである。成績に関係はないけれど、女子にとても人気がある。
さわやかな印象を残す顔立ちをしているので、そんなものなのかな、と思う。

「や、なんか受験面倒くさいなと思って」
梨木くんの手が素早く僕の結果表を奪う。かと思うと、呆れ顔はぽい、と結果表を放り出した。ふてくされたような声が続く。
「W大でAランク取っててなに言ってんだよ」
結果表を拾い上げながら、僕は訊ねる。
「梨木くんはK大、どうだったの」
「C。リアルにやばい。もうこれから追い上げ組がどんどん来るからさー」
「そうだね、追いあげられ組はもう、焦るしかないよな」

梨木くんは嘆くように言った。
「17の夏の想い出っていったらさ、俺、サテライト授業のデジタル画面だよ。海と花火と彼女はどこへ行った」
同感、とわらう。こうやってぼやきあえる友達がいるだけ、まだ救いだ。
教室の前の席の居眠り大魔王はなにをやっているんだろう、と一瞬思って首を振った。

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ほんとはわたしも心で笑いたい。弱いままでも「それでいいよ」って言われたい。
だれも言ってくれないから、だから自分で言うのにな。

【2016/03/09 07:30】 | Painkiller
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ぶれこみさんへ
砂凪
こんにちは、ぶれこみさん。

語りのことなのですが。
この先、もうすこし長めの各人の語りになりますので、すこしご辛抱くださいー。

あと、わたしあんまりプロットは立てないんです。
ざっくり紙に書いて、書くのはいいんですが……それとはちがうほうに頭のなかでパズルがカチカチはまっていく感じで。
だからせっかくのプロットも水泡に帰すのが常です。

一定な自分でいられればいいのですが、どうしても書いているものが「わたし自身」の心の状態に引きずられがちで。

頑張ってプロット(というかお話の種)が見つかるなら頑張るんですけど。。。
頑張り次第でなんとかなるものじゃないんですよね!!!(笑)
アホやーーー。

それではでは☆


ぶれこみ
こんばんは、携帯からコメントしてます。
今更気付いたけど、この作品も多者による描写で構成されていますね。面白いのだけど、すこし、頻繁に語り手が変わりすぎのような気がします。

それと、なにもアイデアのかけらもないのに書き出すのは、あとから辻褄が合わなくなるのが落ちです。少しでもプロットじみたものを、考えてから書いた方が身のためです。
別に〆切に追われている訳ではないのだから、もう少し頑張ってみてはいかがでしょうか?

おせっかいな読者より。



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