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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
【So wonderful are our days】

浅い春の土曜日の朝。というか、昼近く。
ようよう起きてきた明治が真顔で言ったことばに、孝弘は心底おののいた。
「俺、まはるちゃんの入学式にいっちゃだめかな……」
話はした、ような気がする。きのうの夜、存分な交わりのあと。
ただ、若干名がタガを外し気味だったので、記憶は定かでない。
……タガが外れているのは゛『まはるちゃん』にまつわるエトセトラ″においてもおなじらしい。
「常識的に考えて、不審者として前科一犯になるね。小学校から出禁をくらうね」
「だいじょうぶ、保護者っぽくふるまってればいいんだろ」
「保護者はみんな新入生を連れてるだろ、むりむり」
なんでだよー、と心の底からくやしそうにする。
「まはるちゃん、オーソドックスな赤のランドセルなんだろ?」
「なんで知ってる!」
「お前が言ってたの」
いわく、心底うれしそうにまはると赤いランドセルを選びにいったと語ったとかなんとか。
「俺、半額だしてもよかったのに。っていうか、なんで俺に気づかれないように出かけちゃったわけ?」
「姉さんが一緒だったんだよ」
「俺も姪っ子がほしい、まはるちゃんみたいな姪っ子がほしい……」
「ひとりで花いちもんめしてろよ」
孝弘が切って捨てたとき、傍らのスマホが件の姉からの着信を告げた。

「みてみて、メイちゃん、ランドセルー!」
(PTAの役員決め、とやらに出かけていった)姉のこどもがリビングにいる風景になじみつつある自分。
『火に油を注ぐ』という諺を絵に描いたらこうなるだろうな、という状況、と孝弘は冷静に思う。
明治の目の前で、がたがたと金具を鳴らしながらくるくる回り、まはるは子役モデルみたいに完璧にわらっている。
きれいな赤のランドセルは男ふたり世帯に不似合いな華やかさで、不毛の地に咲いた花のようだった。
その赤い花はソファで相好を崩している明治の膝のうえにのぼり、ランドセルのなかからなにやらほかの鞄を引っ張り出した。
「えいごじく、にいくの!」
「塾?」
思わず、孝弘が口を挟むと「たかおじちゃん、おかあさんからきいてたでしょ」と不満げな顔をする。
「まはるちゃんも英語かー」
明治のほうがむしろ、孝弘より感慨深そうだ。
「ようびのうた、うたえるよ」
得意げに言ったまはるがなつかしい旋律で「さんで、さんで、さーんで」と歌いだしたので、孝弘は思わずわらった。
「まはる、理想郷のうただな」
「りそう?」と首を傾げたまはるを膝で軽くゆすりながら「俺は毎日、金曜だったらいいなと思う」と明治は楽しそうに言う。
「なんで」
「ゆうべを思い出しましょうか」
ふしぎそうにこちらを見てくる新一年生に動揺を気取られぬように目をそらした。まはるも、妙なところで勘がいい。
長い髪をぱっと翻して「きんようび、すき?」と明治に訊くので『あわわわ』とうろたえる。状況を悪化させるがごとく、重ねて「なんで?」と尋ねる。
明治は穏やかに微笑んだ。
「金曜日、英語でなんだっけ?」
うつむいたまはるが指折りかぞえ「さんで…?あれー?」とつぶやいた。
「金曜日は、さんでーじゃなくて、ふらいでー」
「おお!」
まはるはぱっと笑顔になる。「わたし、えびがいい!」とこちらを振り向き顔中でわらっている。
きょうの夕飯の献立を駄洒落で決めていくおとなとこども(こどもとこども、かも)に、ため息をこぼし、それでもぬくいなにかがゆっくりと胸のなかにひろがっていくのを覚えた。

キッチンで、子供用の『おてつだいテーブル』(明治購入)にむかってまはると明治がたのしそうにタルタルソースをつくっている。
海老の下ごしらえをしながら、しずかな気持ちで孝弘は「家族のようだ」と思う。
約一名、狂喜乱舞しそうなので決して口にはしないが。
手に入らないもの。
永遠に、孝弘がつくりだせない、幻。
「メイちゃん、にゅうがくしきにきてくれる?」
まはるの声に、今朝の会話が蘇る。俺たちは、と思う。俺たちは、お互い口にせず、けれど、おなじものを求めているのかもしれない。
「俺は、行かないよ」
「えー……」
「お母さんとお父さんが行くんだろ?入学式には、まはるちゃんの家族しかいっちゃだめなんだ」
「そっか、メイちゃんはおともだちだもんね」
「そうそう」
6歳児に『おともだち認定』されてうれしそうな。なんという、愛すべき大ばか。
なんという、愛すべき日々。
窓の外には静かに春の色が淀んでいる。
ふっくらと、季節が醸されるような夜。
エビフライで、まはるのプレ入学祝いをしよう。この、幻の家族で。

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【2017/04/11 14:09】 | まはるシリーズ
|

小太郎さんへ
砂凪
こんにちは~~~。
お読みいただきありがとうございます!

まはるは、ちゃんと成長していく設定です。のび太くん設定ではないのです。
ほんとに!
前職でつくづく実感したのですが、こどもってあっという間におとなびていくので驚かされます。

一年生はかわいいです。
新一年生は、とくにかわいいです。

そうですね……。
いつまで、と思うとちょっと切なくなりますね。
続編も、順次あげていきますね!
ではでは☆彡

まはるちゃん
那須の小太郎
早速Upしていただきありがとうございます(^o^)

まはるちゃん、早くも一年生か(゜_゜)
子供の成長は早いですね!!明治はお友達扱い(~_~;)

私も姪っ子の子供に友達扱いされてますσ(^_^;)
一年生の辺りだと、まだあどけなさもあるから
好いんですが子供はすぐに成長してしまうので
寂しかったり不安だったりします(*_*;

孝弘と明治は何時まで、まはるちゃんと
一緒に居られるんでしょう(゜_゜)

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コメント
この記事へのコメント
小太郎さんへ
こんにちは~~~。
お読みいただきありがとうございます!

まはるは、ちゃんと成長していく設定です。のび太くん設定ではないのです。
ほんとに!
前職でつくづく実感したのですが、こどもってあっという間におとなびていくので驚かされます。

一年生はかわいいです。
新一年生は、とくにかわいいです。

そうですね……。
いつまで、と思うとちょっと切なくなりますね。
続編も、順次あげていきますね!
ではでは☆彡
2017/04/13(Thu) 08:34 | URL  | 砂凪 #-[ 編集]
まはるちゃん
早速Upしていただきありがとうございます(^o^)

まはるちゃん、早くも一年生か(゜_゜)
子供の成長は早いですね!!明治はお友達扱い(~_~;)

私も姪っ子の子供に友達扱いされてますσ(^_^;)
一年生の辺りだと、まだあどけなさもあるから
好いんですが子供はすぐに成長してしまうので
寂しかったり不安だったりします(*_*;

孝弘と明治は何時まで、まはるちゃんと
一緒に居られるんでしょう(゜_゜)
2017/04/12(Wed) 11:44 | URL  | 那須の小太郎 #Fy/OJK/U[ 編集]
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