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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
「雨多さん、もうほんとうに大丈夫なんですか?」
沙紀ちゃんの心配そうな声が、バックヤードの更衣室で制服に着替えた僕の背中を引き留めた。
わらってみせる。沙紀ちゃんには、『うそをつくとき笑います』と、言われてしまっているのだけれども。

「だいじょうぶ。あれから、もうなんにも」

ことばはそこで迷子になる。
なんにも、なんだろう。
問題は、なんだったのだろう。どこにあったのだろう。
そしてそれは。
ぼんやりと、思考がだめなほうにむかってしまうのを止められない。……そして、それは解決したのだろうか。

「なんにも、されてないですね?」

軽くうなずいて、沙紀ちゃんは先に店にむかった。
その姿が、逆光の影なのに、僕にはずいぶんとまぶしい。

「雨多さーん、翠ちゃんがきてますよー」

あかるい声。心の底に沈殿しているぬるいものをゆっくり照らす。
雨多、と自分の声がする。
雨多、お前はどこでなにを学んできたんだ?
その声に頬を引っぱたかれた。自分の居場所くらい、自分で選んでみろ。

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【2017/04/24 07:30】 | 世界の果ての暖炉で
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