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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
薄氷の下にあったものは、まぎれもない『ひとり』だった。
落下地点があまりに意外で、僕は唖然とする。
ただ、ぽかんと現状を眺めているうちに、それしかできないうちに、あの夜に茅野さんの部屋を抜け出すすべを僕から奪った雪がきれいに溶けた。

街灯ひとつ灯った、ひとけのない薄暗いなかを、ふたりで並んで歩いていた。近所のレストランで食事をした後だった。
あのころにはありえなかった、外食。
……まだ、僕は『あのころ』としか思えない。茅野さんの暴力。思い出さないために『あのころ』と思うだけで。

俯いてあるいていると、ふっと気づく。茅野さんの姿が隣にない。
振り返ると、ひとつ後ろの街灯のしたでうわんと影をひろげた茅野さんが、こちらをみていた。
奇妙にゆがんだ影は茅野さんのものなのに、自分の姿をみている気がした。
駆け戻ろうとした足が止まる。どうして。どうして、僕は。
そこで思考は停止する。僕は、なんだろう。

「雨多」
暗闇のなかで奇妙な対峙を破ったのは、茅野さんの声だった。
しずかに、名前を呼ばれた。
「俺といるの、しんどいなぁ」
どうしよう、どうすればいい、なにを言えばいい。否定も肯定もできないのだ。

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【2017/05/11 07:30】 | 世界の果ての暖炉で
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