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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
「……ひとりはこわいですよ」
どうにか返したせりふはあまりに残酷で、ぐらっと足元が揺れた、そんな気がした。
茅野さんがしぼりだすような声でいった。怯えているように、慄いているように。
「……まだ、俺はお前の傍にいてもいいのか?あんなにつらい思いをさせて、なにひとつ償えなくて、それでも、まだ」

やっと、足が動く。
街灯の間の距離が長い、ひとつぶんほどしかなかったのに、のったりとした液状のなかを走るようだった。
ようようコートをつかむ。顔をのぞき込むと、彫像になったように動かない茅野さんは、途方にくれた眼をしていた。
はじめて見る眼だった。このひとにずっと、こんな眼をさせていたのは、僕だ。ごまかして、覆い隠して、『あのころ』としか思えなくて。どこかで、怯えつづけて。

「茅野さんが、くれたのは」

ちいさな声で、ことばを探る。
過不足なく、偽りなく、誇張なく、心を伝えるために。なにも言えず、言わず、後悔の海にいた、このひとのために。
「僕に、くれたのは、マイナスとかネガティブとかだけじゃありません。つらいこともあるのは、そう、なんですけど。でも、それだけじゃなくて」

雨多、いったいぜんたい、お前はどこでなにを学んできたんだ?あの声が、またきこえた。

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【2017/05/12 07:30】 | 世界の果ての暖炉で
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