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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
☆★高居さん豊世くんのつづきです。よろしければよっつ前から遡ってお読みください。お手数をおかけします~…★☆

【しろい虹と夜に零れるもの】

金曜夜、テーブルの上で振動した携帯の画面をみなくても、なぜかその着信が高居さんからだとわかった。
『こんばんは、豊世くん』
おかえりなさい、と返した声が自然であることを心底願った。高速道路での約束から3週間が過ぎていて、僕はむしろあれは願望がみせた記憶なのではないかと思いはじめていた。
高居さんの声で、それは否定される。
『今夜、おいで。お土産も渡したいし』
短い通話をおえると、ジャケットを羽織った僕は家を出て、大通りでタクシーをとめた。口数の少ない運転手のタクシーのラジオからは静かなギターの音色がきこえて、すこし心が落ち着いた。

ゆったりと空間に余裕のある玄関で、高居さんは僕をむかえるなり、うれしくてたまらないといったふうにわらった。リビングでぎゅうっと抱きしめられて、もうこれはまちがいなくそういうことになるのだな、と泣きたいような笑いだしたいような気持ちになった。
しばらくそのまま体温を与えっこしていた身体が「あ、そうだった」と離れた。
「忘れると困るから、お土産」
ぽん、と手渡された紙袋の中身はお菓子と
「この、あひる……はなんですか?」
おもしろいんだよ、と高居さんはわらって僕の手からあひるを取り上げると胴体側面を押した。『べええっ』と声、もしくは音がした。
あひるの声に僕もわらって高居さんから声の主を取り返そうと伸ばした手をつかまれた。転がるあひる。
キスしながら、とよせ、と熱をおびた声で呼ばれる。互いの口腔の温度を思う存分味わう。薄いシャツ越しに背中を撫ぜあげられて我慢できなくなった声がこぼれた。足元に転がっているあひると大差ない。足元がふわふわと頼りなくなってきたところで、行こうか、と高居さんが、言う。

むろん行き先は寝室で、すっかり衣類を脱がされた僕はむき出しになった高居さんの肩のあたりに視線をやっている。
どこをみていいのかわからないのでさらに壁のあたりに目を向けると青空にすうっとしろい虹がかかっている絵がみえた。
「豊世くん」
名を呼ばれたので視線を合わせると、薄暗がりの中で高居さんの眼は得も言われぬ光を放っていた。欲、なのにきれいだ。額を合わせる。
「優しく、できなかったらごめんね」
これからの行いに関する最終通達を言い放つや否や、高居さんは兆していた僕の中心をやわく握った。ため息なのか声なのか判然としない音が唇からこぼれた。どんどん昂っていく高居さんの手のなかのものと僕の声。僕をのぞき込む眼が微笑みのかたちに弧を描く。壁にかかったあの虹みたいだ、とおもった。

僕の声、とジャッジしたくない声がひびく。
「や、ぁ……ん、あ、」
高居さんの手のなかであっけなくいってしまい申し訳ない、とおもっていた僕は「ごめんなさい」の舌の根も乾かぬうちに快楽を追っている。自分が溺れやすい性質だとはじめて気がついた。
うしろに高居さんの指をのまされ、ほぐされている。
「とよせ、そろそろ、俺―……」
切羽詰まった高居さんの声に皆まで言わせず、「きて、きて…っ」と強請った。
押し当てられた欲をすっかり飲み込んだ瞬間、僕はほとんど悲鳴のような声をあげて腰をわななかせた。高居さんがやり過ごすように短くなんども息を吐く。
にじんだ視界に高居さんが映る。つながりを揺すりながら、ひとりごとのように言う。
「なんか、俺がだめにしたみたいだな」
「あ―…だめ、なのはだめ?」
「うれしい」
ぎゅうぎゅう抱きしめられて、夜に零れる声がいっそう高くなる。

シャワーを浴びて、借りたパジャマのすそを折り上げて、ぼうっとした頭で部屋に戻る。
寝具がきれいにととのえられているのをみて、最中よりもなぜかずっと恥ずかしくなった。
こちらに背を向けている高居さんのとなりにもぐりこむと、読書灯がきえて完全な暗闇になる。身体ごと向き直った高居さんが僕を抱き寄せた。おだやかな声が名前をなぞる。
「豊世くん」
「なんですか?」
「君が、君のことが、好きだよ」

意識が眠りのなかに落ちていく途中で「愛しているよ」と、たしかに聞こえた。

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【2017/09/06 09:53】 | お題SS。
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