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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
「どこにいても、どこに行っても、僕は僕だから大丈夫だよね」
あづみは噛みしめるように言う。ちぐさが驚いたような声で言った。
「お前さ、こどもこどもしてると思うと、ときどきびっくりするほど賢いな」
「僕は、かしこいよ」
「……そうだなぁ」
「ちぐさみたいに、おおきくなったらこわいものはないの?」
黙ったまま、兄は弟の髪をふわふわとかき混ぜた。

この会話を思い出すたびに、あづみは思う。
こわいものも、不安なことも、全部ちぐさが引き受けてくれていた。だから、雨が降っても大丈夫だと、地球が滅びてもこわくないと、そう思えていたのに。

ちぐさのこわいものは、なんだったのだろう。

兄と同じ年になって、はじめてわかることがある。
おとなになることは、こわいものや不安なことがなくなることではない、ということが。
単に『おとな』になることは、『こども』ではなくなることに過ぎない。まだ、爪先の大きすぎる靴のような『おとな』と、もう窮屈な『こども』の隙間であづみは思う。

――…ちぐさ、なにがこわかった?
答えはない。もう、なにも聞こえない、聞くことはない。
ただ、あづみのことばだけが想い出のむこうに延びる。

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