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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
《1999年4月》

「あーちゃん、また大きくなったわね」
新学期に2週間ぶりに制服を着ると(あづみの小学校は制服で通うことになっている)、母親が呆れたように嬉しそうに言った。
もう入学式を終えたちぐさは家にいて、シラバス片手に授業の組み合わせを考えている。
あづみからしたら、きらいな算数を抹殺できそうな作業は魅力的だったけれど、優柔不断なちぐさは憂鬱そうで、ときおり「あづみー、この講義と、この講義、どっちがいいと思う?」と小学校5年生の弟に意見を求めては母親に「ちーちゃん、そんなこと聞かれても、あーちゃんが困るでしょ」と頭を小突かれている。

「6年生にはなれないんだなぁ」とあづみがぼやくと、ちぐさがふしぎそうに言った。
「あづみ、6年になりたいのか?」
だってさー、とあづみは唇を尖らせた。
「6年って、威張るじゃん。一個しかちがわないのに。僕が5年で世界は水没」
「でも、6年生の算数の難しさはえげつないぞ」
「……中学生になると、『数学』になるんだよね」

僕は数学を勉強しなくていいのだ、勉強するにしてもちぐさが舟のうえで教えてくれるのだ。すこしわらった。
どれだけ大きくなっても、舟の上では何も変わらない。ちいさな永遠のなかで、そっとそっとなにも壊さずに生きていく。

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