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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
《1999年6月》

ちぐさはまどかとおなじ居酒屋でアルバイトをはじめて、家に帰る時間がめっぽう遅くなった。
「ちぐさ、舟の話が聞きたい」
たまに早く帰ってくる日しかあづみと話ができないので、1999年7月を目前に舟や水没する世界の話は語られることなく弟の心の中に堆積する。
「ちょっと待ってろ、あづみ。風呂入ってくるから」
リビングでちぐさを待っている間にあづみの意識は浮遊をはじめ、そのままソファで眠ってしまう。
母親に揺り起こされて「あーちゃん、寝るならお部屋で寝なさい」といわれる頃には眠気が最優先事項になっており、眼をこすりこすり階段を上る。

6月最後の土曜日。珍しく一日家にいる、といったちぐさは朝のニュースを見ながらあづみに言う。
「お前、海行かない?」
「海?」
「バイト仲間で海に行くんだけど、ついてこないかって聞いてんの」
ソファの上であづみは飛び起きた。
「いいの?」
おとなの世界をみることができる。こわいもの見たさの扉に、指が触れた気がした。


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