秩序のとれた海 例えば君とふたりで
市立図書館に出かけた。あまり、ちぐさとの思い出にない場所。
書架の間を、海藻をくぐる魚のように、これからどうしようと考えながら、ぐるぐる回っていると背中を声が叩いた。

「加科くん?」

振り返ると、同級の尾賀繭子がハードカバーの本を3冊ほど抱えて立っていた。
「あ、やっぱり」
深海から急にまばゆい光の世界に迷い込んだような気がして、あづみが口にしたのは「どうして」だった。

「どうして、って?」
「どうして、僕だってわかったの」
「何万回もみた背中だもん、わかるよ」

あづみはかすかに首をひねる。「意味がわからない」と言う。
繭子がちいさくわらった。

「やっぱり、加科くん変わってるね。ね、このあとなにかある?」
「このあと?」
「図書館でだれかに会うとか、そういうの」
「ない」

じゃあ、と繭子が声を弾ませた。
「駅ビルに行こうよ。加科くん知らないと思うけど、有名なチェーンなんだけどちょっとお高いドーナツのお店ができたの。わたし、行ってみたかったんだ」

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