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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
ひとりで行けば?と言うほど非情ではないので「いいよ」と言った。
完全にちぐさの気配がない場所なら、どこでもよかった。

駅ビルまでの道を繭子と並んで歩いた。
灰色の日傘を差した彼女は、学校で見るより少しきれいに見える。
「夏休み、どこか行った?」とか「面白いことあった?」とか、楽しそうに訊いてくる。「どこにも」とか「なんにも」とか、一言二言返すのが精いっぱいだった。

だって、と思う。繭子が自分を見る目が、まどかちゃんがちぐさを見ていた目とおなじ色をしていたから。
でも。それでもいいかもしれない、と思った。
いつ終わるともしれない世界で、だれかと手を絡ませ合って過ごすのも。

身体をまっすぐに電流が貫いたのはそのときだ。
こんな、ふわふわした気持ちで。こんな、ありふれた気持ちで、自分は、ちぐさを忘れようとしている。
温かいものに、都合よくすり変えて。生きることの怖さと死んでしまうことのふしぎを心で薄めようとしている。

これからの心の全部を使っても、記憶しつづけようと思っているはずなのに。
自分が忘れてしまったら、自分とちぐさの間にあった『何か』は永遠に失われてしまうのに。

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