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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
「平気……、息ができないとか、じゃない」
「そう?」
「うん。ちょっと、情けない」
「あづみくん」

え?と顔をあげるのと、繭子の顔が気まずそうになるのが同時だった。

「ご、ごめんね。いきなり名前で呼んで、あの、名前で呼んじゃうとか不気味だよね」

手首に力を込めた。
「そんなことない。びっくりしただけで、別に、全然」
「加科くん、優しいね」

そう言ったときの、繭子の横顔がとてもきれいだと思った。好きだと思った。呼び方が『加科くん』に戻ったことも。

ことり、と音を立ててその気持ちに蓋をする。
好きもきらいも、ちぐさのいる湖を揺らす。こんな、こんな、ありふれた気持ちじゃだめだ。
ちぐさ。と呼ぶ。胸は確かにまだ痛む。
……まだ?いつか痛んだことさえ忘れてしまう日が来るのだろうか。
忘れたことさえ忘れる日が。
痛みに別れを告げるときが。

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【2018/01/19 07:30】 | いつか、ひかりへ辿り着く
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