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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
音楽家が旋律がきこえれば、拍をとる。
文筆家が絶景を目にすれば、筆をとる。
春歌が恋に落ちたのはそんな感じだったので、相手たる燿のどこに「してやられた」のかはわからない。
ただ、旋律で絶景で、目の前にいると「なんとかしなければ」という思いに駆られる、そういう存在だ。
そして、燿との恋愛がはじまってこの方、旋律が途絶えたり絶景が霞んだりすることがない。盲目のなかで眩いものをみている。

すばらしいミュージックを手掛け、前代未聞の傑作を書いたようなものだな、とふりむかせた春歌自信の感慨としてのところだ。

そして、いままた、なんども経験した新鮮さのなかで燿に抱かれている。奏でるように、書くように、あたらしい輪郭をみつけるように。
だいすき、とおもう。
ぐちゃぐちゃ突かれ、思い切り感じて、うわごとのように「いい」と繰り返す。
「お、願い、……もっと、ああっ」
悲鳴の様相を帯びる声をはじめは心配されたが、いまは逆に高まりを撫でさすられる。
どろどろのなかから春歌は硬質できらきらしたものをひろう。かつんかつん、と頭のなかで鳴る。ひびく。
春歌のみつけたリズムに乗せるように律動され、何度目かもしれぬ果てにたどりつくまで。

「してる時さ」
「……うん」
交わる記憶を思い出すのは恥ずかしくてつらい。自分のCDをきけないミュージシャンが一定数いるというのは、とてもよくわかる。
「春歌、すごいよなー……」
がばりと向き直り、なにがどこが!と大慌てで問い詰めた。『ふつう』の基準がわからないから、なお不安になる。
「いやいや、いや、感じてるとことかいくときとかもちろん、ふつうの意味ですごいけど」
「それはそれで」
「いままで、自分もごまかさなくちゃいけない気分?自分で自分に後ろめたい部分?もあったのにな」
「……のにな?それで?」
「春歌を抱いてるのはぜんぜん違う。オーケストラの指揮者ってこんな気分なのかな。ことばになるまえの音をひろうみたいな」
「はあ」
いいや、おやすみ。
そう言って恋人はそれこそ致命的に照れたのか、むこうをむいてしまう。春歌はこんなにうれしいのに。

ことばになるまえの僕をみつけてくれている。
ひろって、あつめて、かたちにして、名前と言葉を与えて。
それは、彼をみつけた僕と同じ気持ちだろうか。それともそれを上回る感覚なのだろうか。
春歌は燿に出会って、衝撃のあまり、いったんばらばらにほどけた。
そして世界に生まれ落ちるまえの暗がりから、燿に手を引かれて、新たな日のもとへ。陽ざしのなかへ。

眠りに落ちるまえ、朧な回路でおもう。ミュージック。恋はこのうえない音楽だ。
夢のなかで春歌は世界に呼びかける。
ハロー世界。
こちら、はるか。応答、どうぞ。
きこえますか、こちらの音楽が、高まる胸が、呼び合う声が。
かけがえのない、旋律が。

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『にんぎょうひめ』という長編のお話、プロットは頭のなかにあるのです。
ないよ~~~文字に起こす時間がないよ~~~へ(´ム`へ)~~~~~
お仕事がいそがしいよ~~~~
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【2018/09/30 16:36】 | お題SS。
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