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秩序のとれた海 例えば君とふたりで
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ぽんぽんと、世界がはずむような夜だった。
同僚と飲んで別れて、彼の部屋にむかう道すがら。これからの時間に思い馳せ、古い洋画のテーマを口ずさんで。
僕が上機嫌になる要素がない、わけがない。
一緒に見るDVDは左手の濃紺の袋のなか、それからのあれやこれや。
そとで飲んできた僕とするのがすきだという彼も、きっと上機嫌でリネン類を整えているはずで。
口ずさむ歌が坂本九になったあたりで、空をみた。きんきんと耳の痛くなるような、そんな冬の夜。新月の夜。

「新月のときの月ってどうなってるんだろうね」
着衣をはずされながら僕が問うと、彼はまじめに「地球の影になってるんだろ」といった。
「科学じゃなくて、ひとの心のありようの問題」
「ひとがどう思おうと月の状態はかわらんだろ」
わからないひとだなぁ、と思いながら背中に手をまわした。
「いにしえのひとは、月がなくなった夜にはどう考えたかな」
ことばを継ぐ口を唇でふさがれる。縺れあわせる息のなかで、彼はいう。
「生まれ変わるとおもったんじゃないかな」
いいね、そうだね、の代わりに脚をひらく。

もうすぐ、僕もまた、生まれ変わる。
押し入ってくるものをぜんぶで抱きしめて、なにもわからないほど感じて、愛して。
交わるたびに新しい細胞から「好き」が芽吹く。
世界をつくりかえるのはこんなにも簡単だ。新月が巡りくるように、必ず。

髪を梳く指さきにまで震えが走る。
「……あ、っあ、いい、いい」

形ないものはあまりにも強固だ。月の光を手のひらでとらえられないように。触れないように。
月がなくてもあるように、僕の心は確かにここにある。
好きだとおもえないほど好きになっても。
伝えられなくても、示せなくても。
ことばしか、そこになくても。
からだでしか、つながれなくても。

月が消えてもあるように、

しばらくの思考の空白があったので、横になった背中に「なくなるものは、こわいか?」と訊かれたとき「なんの話?」と訊き返してしまった。
「ほら、月の……」
「ううん、ちっとも」
約束なんていらない。誓いもなにも。
きっとなくならないから、いまあるぜんぶが。

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【2018/11/23 16:08】 | お題SS。
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